フレッシュな瑞々しさと若さの躍動感を感じさせてくれる舞台であった。
開演とともに、道化が両手に持った模型の船を嵐の波間に漂う有様を示しながら舞台中央まで進み出てきて、 その後に数名の黒いタイツ姿の男女が入り乱れて嵐の様相をダンスで表現する。
波にもまれる白い衣裳の男女一組―ヴァイオラとセバスチャン―が、波間に漂うようにして黒いタイツの男女に連れ去られて行って嵐が静まる。そして、イリリアの海岸に流れ着いたヴァイオラと船長。
ヴァイオラは男装してオーシーノ公爵に仕える決心をする。
このように1幕1場と2場の場面の入れ替えがあって、舞台はテンポよく進行していく。
この卒業発表会は、A班とB班の2グループがそれぞれ2ステージずつ、全部で4ステージの公演で、一方だけにしか出演しない者と、A、Bで役柄を交代してのキャステイングもあり、A、B両ステージ観て較べてみるのも面白いのではないかと思った。
道化は、A、Bどちらも女性が演じ、Aでは釣遥子が好演。
多分に個人的な好みであるが、注目したのは、ヴァイオラを演じた青木恵、オーシーノ公爵の田中弘志、サー・アンドルーの五十嵐雄介、それにサー・トービーの萩原亮介。
特にヴァイオラを演じた青木恵は、素のままを感じる良さがあって好感を持てた。
サー・アンドルーは演技もさることながら、オリヴィアが嫌いな黄色い靴下に十字の靴下留めをして、シェイクスピアの時代に女性がはいていたチョピンという靴族を高くした靴をはいていて、衣裳面でも工夫が凝らされているのが、見ていて面白いと思った。
眞野里紗が演じるオリヴィアは、はじめは喪に服した黒い衣裳であるが、ヴァイオラに恋してからは、真っ赤なバラで頭を飾り、衣裳にもバラをつけ華やかなものに着替え、コミカルな感じを強く出していていた。
大円団では、嵐の場面の黒いタイツ姿の男女が再び登場し、各自が四角い鏡(のようなもの)を手にして観客席に向けるが、照明に反射して時々舞台がまぶしく一瞬見えなくなる時があったが、この最後の工夫が何を表象しているのかはつかめなかった。
途中15分の休憩を入れて、2時間40分の上演。
若い人たちの舞台を見るのは楽しみだ。そしてこれから先、彼らがどういう役者に育っていくかも楽しみである。
翻訳/河合祥一郎、演出/松本祐子
1月25日(土)14時開演(A班)、文学座アトリエ、チケット:1000円
(全席自由で、このステージは満席であったが、早めに行っていたので舞台正面の最前列を確保できた)
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