高木登 観劇日記2013年 トップページへ
 
  シェイクスピア・シアター公演 『リア王』      No. 2013-041
 

シェイクスピア・シアター冬公演『冬物語』に続く第2弾は、女性たちのシェイクスピアとして女優だけで演じる『リア王』。リアであれば「必然性などと言うな」と言うかも知れないが、この舞台を見てなぜ女性だけで演じる必然性があるのか、正直言って分からない。
リアが三人の娘たちに国譲りをする冒頭の場面では、地図の代わりに赤いドッジボールが使用される。
その赤いボールはリアやゴネリル、リーガンたちが退場した後、リアの座っていた椅子に載せられ、舞台奥中央に据えられて残されるが、それはゴネリルとリーガンの争いの予兆を表象するかのようにも見えた。
リアに見放されたコーデリアが、自分をかばってくれたケントが追放される時、彼の足下にすり寄って指輪を与える場面は注目すべき演出であると思った。
しかしながらこの国譲りの場面で、ゴネリルとリーガンがリアに愛情表現する時の地面にひれ伏すような、いつもながらの所作には違和感と言うより不快感が残った。
嵐の場面で嵐に向かって叫ぶリア、コーデリアの死を嘆いて登場してくるリアの台詞も、熱演にもかかわらず心に訴えてくるものがなかったのも不満であった。
リアがコーデリアを抱いて登場する場面がどのような形で出てくるか興味深かったが、リアを演じる奥山美代子よりは少し身体が大きい感じの住川佳寿子を抱いて登場してきたのには少し驚きでもあった。
「この悲しい時代の重荷に耐えていくほかあるまい」という最後の台詞をオールバニが言った時、自分の頭の中ではエドガーが言うと思っていたので一瞬戸惑ったが、小田島雄志訳であればオールバニの台詞として当然であった。これは自分が読んだ原文のイメージの残像との相違であった。
この舞台の中心人物は『冬物語』同様、リアの奥山美代子、ゴネリルの福田絵里、ケントの片渕詩忍、エドマンドの千田美智子、道化の前東美菜子らで文学座の俳優で占められている。
悲劇であっても心に訴えるものがあれば心楽しくなるものだが、残念ながらこの舞台にはそれがなかった。
個人的な思いとしては、シェイクスピア・シアターのかつてあったあの楽しさはどこに消えてしまったのか、そのことが淋しい。


(訳/小田島雄志、演出/出口典雄、12月17日(火)夜、俳優座劇場にて観劇、
チケット:『冬物語』とのセットで6000円、座席:5列12番)

 

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