高木登 観劇日記2013年 トップページへ
 
  タイプス公演 『fairy moon 〜夏の終わりに〜』      No. 2013-031
 

タイプスが表題に掲げる「Shakespeare Entertainment」と『夏の夜の夢』を『fairy moon〜夏の終わりに〜』と題しているところから、この劇のというか、タイプスの基本的な姿勢というものを強く感じるものがある。

それは、シェイクスピアを難しくとらえるのではなく、役者は楽しんで演じ、観客はそれを観て楽しむということが第一ということである。

なかでも芝居を楽しんで演じているのはアテネの職人たちを演じる若い俳優さんたちであろう。

原作にある職人たちに加えて染物屋や、パン屋、炭焼き屋が登場し、彼らは「蚊」や、「ウサギ」、「梟」などを演じる。台詞は一切ないがそれでも楽しそうに演じているのを見ていると、見ている側も引きずられて楽しくなる。

公爵の台詞ではないが、芝居の中身は拙く、ばかばかしくとも「役者たちが自分のことを想像している程度にこちらも想像してやれば、けっこう名優として通る」ものであり、「芝居とは最高のものでもしょせん実人生の影にすぎぬ、だが最低のものでも影以下ではない」。

アテネの職人たちは、彼ら若手の俳優さんたちと通じるものがあり、その一所懸命さがいとおしくもある。

今回の芝居の中で最も印象的で「はまり役」だと思ったのは、ハーミアを演じた藤原亜紀乃。

それに対応するヘレナの杜名優花がハーミアに向かって言う「保育園児」が愉快であった。

「あやつり人形」というかわりに「保育園児」という言葉を繰り返し言って笑いを誘う。

アテネの公爵シーシウスを演じた武田光太郎や、妖精の王オーベロンの倉石功(ゲスト出演)は、ベテラン俳優らしく沈着な趣のなかにも、滋味のある演技で若手の演技を引き上げてやっている気がする。

片岡優香のヒポリタ、堀明日香のタイテーニア、鷲見亮のライサンダー、木村一八(ゲスト出演)のデミートリアスらは中堅でしっかりと固められている。

機織り職人のボトムには鈴木文健、妖精パック(ダブルキャスト)には隼尻裕也と駿太が抜擢されていて、僕が見た回ではパックは隼尻裕也の方であった。

音楽はいつものように、井村利徳と井上達也の生演奏で、今回はいつもにも増して効果的に感じた。

スピード感を出すためもあってか台詞のカットもかなり多く、けっこう大事だと思う台詞も思い切ってカットしているのが潔いくらいであった。

たとえばライサンダーとハーミアが許されない恋を嘆く二人の会話、「まことの恋が平穏無事に進んだためしはない、必ず障害がある」というその障害の列挙の会話が省かれていたりしているのもその一例である。

 

「異常気象」というのが常套句になったこの夏も終わりが近づいている、そのタイトルにふさわしく我々をファンタジーの世界に誘ってくれ一夏の思い出を残してくれた、その若手の演技を祝して個人的な賞を授与しましょう。

ハーミアを演じた藤原亜紀乃さんに「ぴったりで賞」。

ヘレナを演じた杜名優花さんに「やったで賞」。

アテネの職人たちを演じた若手の元気な俳優さんたちには「御苦労さんで賞」。

妖精たちを演じた宍倉鈴華さん(蜘蛛の糸)、斉藤美南海さん(豆の花)、愛田侑加さん(蛾の羽根)、高橋かおるさん(芥子の種)には「かわいいで賞」。

 

(台本構成・演出/パク・バンイル、両国のシアターXにて、9月7日(土)夜の部で観劇。
全席自由席)

 

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