高木登 観劇日記2013年 トップページへ
 
  タイプス第54回公演 『間違いの喜劇』      No. 2013-022
 

間違いの喜劇』はこれまでに10回以上観てきているが、その中で少なくとも7回以上は出口典雄演出のシェイクスピア・シアター公演で観ており、シェイクスピアをはじめて面白いと思ったのが、1993年、当時のパナソニック・グローブ座でのこの『間違いの喜劇』であった。

当時、シェイクスピア・シアターでは17期生、18期生が活躍していた時代で、現在タイプス代表で、今回エフェサスの公爵を演じている新本一真(当時は新本芳一)が18期生、娼婦トップを演じている森下友香(当時遠藤友香)も同じく18期生であったが、この時二人は『間違いの喜劇』には出演せず、同時公演の『夏の夜の夢』で、新本がWキャストでボトムとスナッグを日替わりで演じ、森下はハーミアを日替わりで演じていた。

僕がシェイクスピア劇を本格的に見始めたのがこの1993年からということもあって、当時のシェイクスピア・シアターのメンバーには個人的にことのほか愛着を感じていて、このように20年後に彼らの姿を舞台で再び見ることができることが懐かしくもあり、嬉しくもあるのだった。

冒頭、今回の上演と直接関係なさそうなことを書いているのは、今回の上演で頑張って演じた若手俳優の今後について、当時僕がシェイクスピア・シアターで感じたと同じような面白さと、楽しさと、将来への期待を感じたからに他ならない。

シェイクスピア・シアターで初めて観た『間違いの喜劇』は、半仮面をつけてコメディア・デラルテのような劇で、そのとき新鮮な驚きとまぶしさは今でも忘れないが、今回のこのタイプスの『間違いの喜劇』はそれとはまた違った楽しさ、面白さ、新鮮味を感じさせるものがあった。

その特徴の一つには、劇中のダンサーを中心にした踊りと生演奏の音楽にもある。

また、当時のシェイクスピア・シアターで感じたと同じように、全員がそれぞれにおいて主役であるということを感じさせてくれた。

もちろん、『間違いの喜劇』では、二組の双子の兄弟、アンティフォラス兄弟とドローミオの兄弟が主役であるのは間違いないのであるが、準主役のエドリアーナやルシアーナ、イージオンやエミリアはもちろんのこと、金細工師や商人たち、端役の娼婦たちやエフェサスの町の人々など全員がそれぞれの役において主役といってよいほど輝いていた。それが見ていて楽しく、嬉しくもあった。

今回は出演者も多いこともあってか、金細工師アンジェロには三人一組で演じ、それぞれアンジェロ、パンジェロ、ポンジェロと名乗り、三人合わせてアン・パン・ポンなどという遊びの役をいくつか作っていた。

商人バルターザーもその内の一つで、82歳の丸山詠二が演じ、エフェサスの町の町内会長という設定であるが、最後にイージオンの処刑取りやめの決定をエフェソスの公爵に代わって下すことで彼の身分が明らかになり、何か水戸黄門の印籠を見せつけられたような格好よさとカタルシスを感じた。

僕が下すこの劇の善し悪しの判断の一つに、この劇のもう一つのテーマともいうべきイージオンとエミリアの再会の場面で、二人の再会に涙することがあるかどうかなのだが、今回、その涙がわいてくるのを感じたという点において、僕にとっては最高のうちの一つにあげることができる。

アンティフォラス弟に佐野信輔、アンティフォラス兄に駿太、ドローミオ弟に佐々木恭祐、ドローミオ兄に上杉豪、エドリエーナに田中香子、ルシアーナに藤原亜紀乃、イージオンに森田一休、エミリアに高岡季里子、娼婦トップに森下友香、エフェサスの公爵ソライナスに新本一真。その他全員に拍手を送ってあげたい。

上演時間は、休憩なしで1時間50分。

【感激度】 ★★★★

 

(翻訳/小田島雄志、台本構成・演出/パク・バンイル、6月13日(木)昼、座・高円寺2にて観劇)

 

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