高木登 観劇日記2013年 トップページへ
 
  無名塾公演 『ウィリアム・シェイクスピア』      No. 2013-019
 

吉祥寺シアターの2013年度のテーマがシェイクスピア・シリーズだということを不覚にもこの劇を見るまで知らなかった。また無名塾が2012年から仲代達矢が出演しない塾生公演を始め、今回がその2回目であることも初耳であった。

紹介記事によると、この作品は1826年、デンマークの作家カスパー・ヨハネス・ボイエ(1791ー1851)とデンマークの宮廷作曲家であったフリードリッヒ・クーラウ(1786−1832)との共同制作で仕上げられ、ボイエの劇場作品の中では最も上演回数の多いものとなったという。

シェイクスピアを描いた作品といえば、映画では『恋に落ちたシェイクスピア』や、つい最近では『もうひとりのシェイクスピア』が記憶に新しいが、シェイクスピア作品にゆかりの深いデンマークで、200年近く前にすでにシェイクスピアのことが書かれていたということが何よりも驚きであった。

市長まで務めたジョン・シェイクスピアの家は今や零落したにもかかわらず、跡取り息子のウィリアムは家業の織物業をそっちのけにしてホリンシェッドの年代記に没頭しては物語を夢想し、詩作にふけっている。

ウィリアムが自由に夢想にふけるのは、妖精アルフ、オベロン、ティタニアがいる森の中であった。

妖精たちは彼を優しく見守り、彼はそこでインスピレーションを注がれるのであった。

折しも友人のバービッジがグリーンと彼のところに滞在していたが、バーベッジはシェイクスピアの詩の才能を認めていて、家業のため詩作をあきらめようとするシェイクスピアに彼の作品を見せろといって、彼の作品『マクベス』を受け取る。それを一読したバーベッジは感激するが、シェイクスピアは弟ギルバートの諫言で、詩作をあきらめる。

ウィリアムは家業の織物業を継ぐための徒弟試験に布を制作して提出するが、とても製品とは言えない代物であったが、ウィリアムの婚約者アンナの父親リチャード・ハザウェイの計らいで何とか合格し、ハザウェイに詩作をあきらめる約束をしてその日アンナと正式に結婚する。

だが婚礼の夜、ウィリアムは彼に敵意をもっているトーマス・ルーシーの森番アランの計略にかかって鹿泥棒の汚名をかぶせられるが、投獄される汚名を恐れて逃亡を決意する。

新婚のアンナも彼と一緒に逃げるといって二人は森で待ち合わせるが、アンナはいつまで待てどもやって来ず、そのうちにウィリアムは寝入ってしまう。

妖精たちが彼の書いた『マクベス』を演じ始め、ウィルはその中で自分がマクベスとなって演じ始める。

最後にマクベスはマクダフに倒されるわけだが、彼はそこで気を失ってしまい、目覚めたところにアンナがやってきて、ウィルはロンドンに行くことを決意し、劇作家シェイクスピアへの旅立ちとなる。

有名なルーシーの鹿泥棒伝説に、森番アランを足の不自由な醜い姿をさせてリチャード三世の台詞をしゃべらせ、妖精たちによる『マクベス』の劇中劇が演じられ、締めくくりは妖精のアルフ、オベロン、ティタニアによる『夏の夜の夢』のパックのエピローグの台詞といった具合に、盛りだくさんのシェイクスピア・オンパレードで楽しませてくれる。

休憩なしの2時間の上演でシェイクスピアをたっぷりと味わった。快感!

ウィリアムに松崎謙二、アンナに鷹野梨恵子、ウィルの父ジョンに平田康之、ハザウェイに中山研。敵対人物のトーマス・ルーシーに川村進、森番アランに仲田育史。森の妖精たちのアルフに円地晶子、オベロンに吉田道弘、ティタニアに江間直子など、多彩な顔ぶれ。

 

(原作/カスパー・ヨハネス・ボイエ、音楽/フリードリッヒ・クーラウ、
デンマーク語翻訳/福井信子、
シェイクスピア劇翻訳/小田島雄志、脚色・演出/杉本凌士、
5月20日(月)昼、吉祥寺シアターにて観劇。チケット:4800円、座席:G列8番)

 

 

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