高木登 観劇日記2013年 トップページへ
 
  タイプス第53回公演 『ウィンザーの陽気な女房たち』      No. 2013-014
 

開演とともに三人の魔女ならぬダンサーたちが登場し、ダンスを踊った後に三人が声をあわせ、チャーミングな仕草で、ウィンザーの陽気な女房たち!と言って退場していくと、上手奥から、怒りにかられたシャロー治安判事をエヴァンズ神父が宥めながら、スレンダーとともに登場してきて舞台が始まる。

ダンスで始めるというこの導入部がこの劇の楽しさを予兆させ、期待を膨らませてくれ、その期待刊を裏切らない楽しい舞台であった。

フォルスタッフが最初に登場してくる場面では、この三人のダンサーたちに露払いとして踊らせて、ピストルやニム、それにバードルフの手下を連れておもむろに登場し、踊り終わったダンサーに「御苦労であった」とチップの金を渡すきめの細かい演出なども面白い趣向だと感じた。

フォルスタッフは、初めてフォード夫人と逢い引きをする時にもこのダンサーたちに露払いとして踊りを踊らせ、気分を盛り上げたところでフォード夫人に求愛するのもなかなかいい。

今回のダンスを取り入れた演出で際立った効果を感じたのは、ダンサーを入れた踊りの場面だけでなく、ドクター・キーズとエヴァンズ神父の決闘の緊張した場面にもずっこけるようなテンポの踊りを加えたりして、笑わせては楽しませてくれたことだった。

演技面で光っていたのは、ブルックに変装したフォード氏を演じる岡本高英が、その表情、所作ともに優れていた。

新本一真演じるフォルスタッフは、非常に身近に感じる近しい存在として親しみを感じるものであった。

クイックリーを演じたシェイクスピア・シアター出身の森下友香は、演技もさることながら台詞がうまい。

タイトル・ロールとしての二人の女房たち、ページ夫人の大竹一重とフォード夫人の堀明日香は、前者は台詞力で、後者は表情と所作の面白さで、それにふさわしい存在感を示していた。

配役で最初に面白いと思ったのは、レオンティーズやマクベスを演じた庄田侑右がスレンダーを演じたことである。

人物像としてはまったく対極的とでも言うべき役柄で、タイプス公演を見続けている者にとっては、この演技のギャップの感覚がたまらなく面白く思えるのだった。そしてそのギャップをうまく演じていた。

相手役としてのアン・ページを演じる藤原亜紀乃は、彼女のにこやかな笑顔を見ているだけでホンワリと心が和み、スレンダーとのやりとりをうっとりと聞かせてくれた。彼女はそれだけでも得をする存在だった。

ピストルを演じる工藤翔馬や、ニムを演じる安齋直哉も精悍な感じで動きもよく、若さを感じさせ、見ていて気持ちがいい。

バードルフを女優の杜名優花に演じさせ、赤鼻の小娘にしたのも面白い試みであったし、彼女のとぼけた台詞の演技にも味があった。

フォルスタッフとウィンザーの陽気な女房たちの主筋とは別に、脇筋としての存在であるエヴァンズ神父、キーズ医師、ガーター亭の亭主など若手陣は、演技や台詞はうまいと言えないまでも、その溌剌としたひたむきな演技が好ましく伝わってくるものであった。

彼らに今求められるのは単なるうまさより、このような演技への気持だと思う。

新本一真が目指す、演ずる者がまず楽しもうという姿勢と、それに伴ってお客を楽しませようというサービス精神の感じられる舞台であった。

タイプスは設立から13年になるということで、シェイクスピア・アカデミーを新設し、この度その第1期生を募集しているが、かつてのシェイクスピア・シアターがそうであったように、若手が育っていく舞台を見つめていく楽しみを今後とも期待したい。

 

(台本構成・演出/パク・バンイル、4月4日(木)夜、シアターXにて。
全席自由席で、最前列中央で観劇)

 

 

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