日英語と逍遥訳による『ロミオとジュリエット』二題と『アテネタイモン』の朗読劇、etc
昼の部(13時半開演)と夜の部(17時開演)を通しで観劇。昼、夜の部とも二部構成。
昼の部では、第一部が「シェイクスピア・リサイタル」と称して、最初にシェイクスピア・ソングを清水英之と水谷利美、ソネットと名台詞を山茶花倶楽部朗読会のメンバーが朗読、続いて坪内逍遥訳「該撒奇談(しいざるきだん)」自由太刀餘波鋭鋒(じゆうのたちなごりのきれあじ)を、東儀雅楽子の笙演奏で、荒井良雄の院本体での語り、ブルータスの演説を荒井良雄、アントニーの演説を新地球座代表の久野壱弘、預言者を特別出演の前島幹雄が演じた。
「日英シェイクスピア」ということで、ソネットや名台詞は、最初に原語、次に日本語で朗読された。
荒井先生による「該撒奇談」の院本体の語りは、こういう場でしか聞くことができない貴重な体験であった。
特別出演の前島幹雄の預言者の台詞は短く、出番もほんのすこしであるにもかかわらず、その存在感は強烈で圧倒的であった。
第二部では、東京シェイクスピア・カンパニー(TSC)の江戸馨とつかさまりによる『ロミオとジュリエット』。
『ロミオ』は悲劇だとされており、実際、プロローグの序詞役の台詞(ソネット形式になっている)で冒頭から悲劇として定義づけられているが、乳母の台詞など喜劇的要素の多い作品であることなどという江戸馨の解説が的確で、聞いていても面白くためにもなり、作品の鑑賞にも大いに参考になる啓示を与えてくれるのが嬉しい。
日本語で朗読する台詞は江戸馨の翻訳で行ったが、<別れの朝>の場面のみ悲劇性を強調するために坪内逍遥訳を用いるという構成であった。
舞踏会での<運命の出会い>、<バルコニー>シーン、乳母の<おそい恋の使い>の場面のジュリエットを江戸馨が原語で朗読し、ロミオや乳母の役をつかさまりが日本語で朗読。
また、<悲劇の前夜>では、キャピュレットと、その夫人をつかさまり、召使いと乳母を江戸馨、そしてジュリエットを江戸馨が原語で朗読するという趣向。
江戸馨の原語で演じるジュリエットは、その美しい英語の響きに酔いしれさせてくれた。
つかさまりの乳母とロミオの声色の使い分けも、いつもながら見事だなあと思い真柄聞き入った。
夜の部は、逍遥シェイクスピア名場面朗読劇として、第一部が『ロミオとヂュリエット』。
プロローグを最初に原語で、次に逍遥訳で荒井良雄が朗読。
ロミオの台詞は蔀英治、ヂュリエットを武松洋子が朗読。
第二部は、久野壱弘がタイモン、円道一弥がフレーヴィヤス(タイモンの執事)を演じる『アセンズのタイモン』。
日本ではほとんど上演される機会のない作品であるが、この二人の登場人物だけで作品全体の内容・モチーフが把握できる構成となっているのが素晴らしかった。
シェイクスピア没400年の2016年まで余すところ3年であるが、「日英シェイクスピア祭」は3年先までの企画がすでに完成しており、最後の作品も決まっているということを荒井先生が終わりの挨拶で触れられた。
終わりよければすべてよしということで、作品もそれで決まっているということである。
そして、そのときまでに逍遥訳シェイクスピア全作品の朗読上演も終えるという。
シェイクスピアを愛する同胞たちとともに聴くことができるこのような空間は、貴族や王様たちが宮廷で楽しんだような豪華な気分に浸っているようで、至福の時を味わった。
主催/日英シェイクスピア祭実行委員会、企画・監修/荒井良雄
4月29日(月)、自由が丘・STAGE悠
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