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  シェイクスピア・カンパニー公演 『新・ロミオとジュリエット』     No. 2013-015

― 舞台を東北の架空の場所、舌奈(べろな)温泉に設定 ―

 三部立てで、最初に月輪まり子の「ライア―による演奏」(5分)、続いてシェイクスピア・カンパニー主宰者の下館和巳のお話「東北の湊をめぐって」(20分)、そして本番の演劇が70分。
 月輪まり子のライアー演奏は、聞いているうちにエメラルドグリーンの海中を遊泳しているような気分になって、静かに聞き入った。
 下館和巳の「話」では、3・11の大震災の後何もかもが崩壊してしまったような感じで、東北弁によるシェイクスピア演劇の活動をやめてしまおうかと思ったが、ひとりのおばあちゃんとの出会いに、この劇を待っている人々がいる声に心を励まされ、続けていくことが使命だと静かな口調であるが、重い決意を語られた。
 池上実相寺の座敷を観客がコの字型に囲む形の舞台で、観客と演ずる人たちとの隔たりがない。
例によって舞台は東北で、架空の伊田利(いだり)温泉郷・舌奈(べろな)温泉。そこに二つの大きな温泉宿があり、その二つが300年以上も前から犬猿の仲。以下名前はメンドイので、原作の名前で表示する。
 ロミオは大学受験を前にした地元の公立高校の3年生、ジュリは14歳で仙台のお嬢様学校の私立の中学生。
 ジュリの家のホテルの新館落成記念祝賀会に出席したロミオは、そこで初めてジュリと出会い、二人はたちまち恋し合う。
 このような状況設定にあっては、殺人や暴力的な死、ロミオとジュリの死は似つかわしくというより、問題に思われたが、そこは原作を上手に書き換えてある。
 マーキューシオとティボルトは公衆浴場の中で喧嘩するが、怪我で終わる。
 修道士ロレンスの役は、またぎが務める。
 ロミオとジュリは、またぎにもらった薬で24時間仮死し、両家の両親は子供の死を嘆くが、またぎが坊主となってお経をあげている最中、ふたりは仮死から目覚める。
 両家は和解した上に旅館も合併し、ロミオとジュリは成人して家を継ぎ、旅館の経営者としてめでたく収まるというハッピーエンドである。
 時代設定は劇中に出てくる歌謡曲や歌手の名前で半世紀近くも前だと知れ、懐かしさのノスタルジーを感じる。
 東北弁を話す人たちには、心にしっとりとくるのだろうと思われるが、九州出身の自分にとっては、残念ながらその近しさは感じられなかった。
 下館和巳が最後の挨拶の言葉で語っていることであるが、この劇を観たおばあちゃんが役者の台詞を両手でしっかり受けとめているあたたかみ、それが大事だと思う。
 だから、この劇は本来僕らが東北まで出向いていって、その言葉の中に入り込んで観るべきものだと思う。
本気で受けとめようと思えば安直に済まそうと思ってはならないと思う。


脚本・演出/下館和巳
4月7日(日)11時開演、池上実相寺、観劇料:2500円

 

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