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  YSG座長瀬沼一人十色朗読劇 「Twelfth Night 『十二夜』」
             第10回神奈川演劇博覧会           
No. 2013-012

 3月17日(土)、18日(日)と20日(水)の3日間にわたる神奈川演劇博覧会では、全部で14作品が演じられたが、そのうちシェイクスピア作品は2演目であった。

●YSG座長瀬沼達也一人十色朗読劇、第3回 「Twelfth Night(『十二夜』)」
 シェイクスピアが1602年『ハムレット』に続く新作を発表し、その紹介のために400年後の日本にやってきた。
 シェイクスピアは語学の天才であるということで、日本語をマスターしてきて、新作の概要を日本語で紹介しながら作品を英語で朗読していくという趣向である。
 司会者(座長がシェイクスピアと一人二役)の紹介で、シェイクスピアが『から騒ぎ』の中の歌の一節を歌いながら登場し、続いて『ハムレット』の"To be or not to be"の場面を朗読する。
 今回の新作はこの大評判となった『ハムレット』に続くシェイクスピアの自信作、『十二夜』。一卵性双生児の双子の兄妹の物語であるが、その物語はシェイクスピアの双子の子供、ハムネットとジュディスのうち、数年前にハムネットを亡くしたことが『ハムレット』と『十二夜』の作品に反映しているというのが瀬沼氏の持論で、『から騒ぎ』はその前の作品に位置するということで、その一連の流れとして冒頭部が構成・演出されている。
 英語劇というハードな内容であるにもかかわらず、会場には母親と一緒の小学生の子が何人もいたが、会場の空気は意外にも舞台と親和していて、演じる瀬沼氏もノリに乗っているのが感じられた。
しかしながら、50分間という制限された時間ということもあって、演出者の好みによる名場面抽出は、この物語の全体を知らない観客にとっては日本語の説明があっても内容が十分につかめないだけでなく、せっかくのセバスチャンとヴァイオラの再会の感動の場面も演出者の思い入れだけで、その感動が伝わるところまでいかない。
 内容、台詞を知っている者にとっては、瀬沼氏の台詞を聞くだけでも楽しみを堪能できるが、一人芝居を楽しんでもらうには、一人芝居用としての構成の工夫が必要であると感じた。
 瀬沼氏が演じる時の風貌は、近年、ますますシェイクスピアそっくりになってきた。
                              (演出/瀬沼達也、出演/瀬沼達也)

●神田外語DRDMによるシェイクスピア アンソロジ
 グループ紹介として、神田外語グループの教職員・学生・卒業生・市民が演劇専門人との協働で子供たちも楽しめる演劇を目指し、グループ名のDRDMはDramatic Recitation with Dance and Musicの略である。
 『夏の夜の夢』のシーシウスとヒポリタの婚礼の余興に各人が芝居を持ち寄って演じるという趣向で、その構成はなかなかうまくできていた。
 『ロミオとジュリエット』のバルコニーシーンに始まり、続く『マクベス』ではダンカンを殺害する前後のマクベスとマクベス夫人のやりとりと、マクベスのTomorrow Speech。
 どちらも「死」が出てきて婚礼にはふさわしくないではないかということで、『ヴェニスの商人』の人肉裁判の場面、『ヴェローナの二紳士』と続けるが、どれも今一つ婚礼の場に相応しいとは言えないということで、最後に『お気に召すまま』が出され、やっと婚礼にふさわしい演目となる。
 50分の制限時間内で、5本のシェイクスピアを楽しませてくれたということで、きっと公爵からご褒美を頂けること間違いなしである。
 最後は、パックの台詞で観衆の惜しみない拍手。(演出・構成/野崎美子、森田等、児玉朗)
                  3月20日(水)、神奈川県立青少年センター、全席自由・無料

 

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