『ウィンザーの陽気な女房たち』と言えば、主役は勿論フォルスタッフ、のはずであるが、SPACE Uの『ウィンザー』では、むしろ3人の女性たちが主役と思えるほど、ページ夫人、フォード夫人、クィックリー夫人がフォルスタッフを手玉に取って弄び、その存在もかすむほどであった。
なかでも中原三千代演じるページ夫人がなかなかの好演。宝塚の元娘役トップスターの星奈優里が演じる美人フォード夫人と好対照で三枚目なところが、生々しくリアルに楽しませる効がある。そんな彼女にはクィックリー夫人も演じさせてみたくなった。
このところシェイクスピア劇での客演が目立つSTUDIO LIFEの看板俳優、山崎康一がキーズ医師を好演。
シャロー判事の植松洋、スレンダーの串間保など、そこにいるだけで面白みを感じさせる存在も見逃せない。
これまで舞台で観てきたフォルスタッフは時代がかった騎士の姿をしたフォルスタッフが中心であったが、今回大島宇三郎の演じるフォルスタッフは背広を着た紳士の格好で、全体的にも現代と同時代的雰囲気の舞台設定であった。
小田島雄志の訳を使用しながらも、多少原作との内容を変化させている個所がいくつかある。
たとえば、医師キーズがエバンズ神父と決闘する場面で、原作ではガーター亭の亭主らの企みで互いに違った場所を指定して決闘を避けさせるのだが、ここでは一日経つと何もかも忘れてしまう人物としてキーズ医師を設定し、決闘のことを忘れてしまわせることなどがその一例である。
この劇を円満に終わらせているのは、フォルスタッフだけが騙されたのではなく、ページ夫妻、それにアンと結婚するつもりであったスレンダーやキーズ医師も等しく騙されたというフォルスタッフの最後の台詞と、子供たちを中心にした妖精たちの踊りで締めくくられることで、心和やかに見終えることが出来た。
それは振り返ってみれば、大島宇三郎のフォルスタッフの和やかさでもあった。
休憩なしの2時間10分の上演。
訳/小田島雄志、演出/R.
2月3日(日)14時開演、新国立劇場・小劇場、チケット:5000円、
座席:B3列1番、パンフレット:500円
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