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  劇団シェイクスピア・シアター 2012年12月公演
     最終演出版 『マクベス』 & 女優だけで演じる 『から騒ぎ』  
No. 2012-028

 今年最後の見納めは、シェイクスピア・シアターの『マクベス』と『から騒ぎ』。
 シェイクスピア・シアターの劇団員は、今はわずか3名残るのみで、劇団の公演というよりシェイクスピア・シアター・プロデュース公演と言った方が正確な気がした。
 今年になってから公演のチラシには、上演作品について「出口典雄最後の演出」という枕詞が付いており、劇団員の減少と合わせて一抹の寂しさを感じる.。
 しかしながら、出口典雄の意欲的な姿勢は衰えず、新たな企画としての同時2演目の全キャストを女優たちによる上演にしている。
 だが、この女優たちだけの上演企画も今年だけで終わるかも知れない。

 昼の部の『マクベス』では、前半部はほとんど眠っていた感じである。
 出足の魔女たちの演出も平板で取り立てて言うこともなく、マクベスを演じる大場泰正にも魅力を感じず、tomorrow speechも平板な感じでひきつけるものがなかった。
 宴会の席でバンクォーの亡霊が出る場面は、血まみれのバンクォーが足早に出てきて椅子に座り、用が済むとまた足早に引き下がっていく演出で、あまり感心しなかった。
 マクベス夫人は、春の公演でシャイロックを演じた文学座の奥山美代子が演じ、演技面では一番際立っていた。

 夜の部の、女優たちだけによる『から騒ぎ』の方が、元気があってよかった。
 山下裕子のベネディック、白玉麻規子のベアトリス、木村美保のドグベリーなどが楽しませてくれた。
 ベネディックやベアトリスが盗み聞きする場面は何も小道具を用いず、ベネディックはソフト帽で顔を隠して舞台正面を向いて立っているだけの姿勢、ベアトリスはつばの広い帽子をかぶって地面に這いつくばっている姿勢で、隠れて盗み聞きしている様子を出していたが、なまじ小道具を使うより面白かった。
 バルサザーを演じる中川奈美の歌声に聞きほれた。彼女は歌だけで登場。
 ドン・ジョンは片足を負傷している設定で、膝から下を包帯で巻いて、足を引きずって歩く演技であったが、青の設定には余り感心できなかった。


小田島雄志訳、出口典雄演出
12月15日(土)14時、『マクベス』、18時45分、『から騒ぎ』、俳優座劇場、
チケット:(2演目で)5000円

 

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