高木登 観劇日記2012年 トップページへ
 
  タイプスプロデュース第50回記念公演・第2弾 『マクベス』      No. 2012-025
 

左右の舞台奥、ドラムとエレキギターの演奏者が控えている紗幕の内側から開演とともに、激しいリズムの音楽に乗せられて黒い衣裳の魔女と思しき二人が躍り出る。

その二人の魔女らしき姿からこの舞台では魔女は二人しか出ないのかと一瞬思ったが、音楽が止んで二人が引き込むと魔女が三人現れた。

舞台中央部に屏風形をした台があり、他には何もない。

場面展開の登場人物の入れ替わりのテンポも早く、魔女の登場、ダンカンの登場、傷ついた兵士たちの戦況報告(ここでは三人の兵士として現われる)、バンクォーとマクベスの魔女たちとの遭遇、マクベス、バンクォーの帰還、マルカムが王の継承者としてカンバーランド公に叙せられ、マクベス夫人がマクベスの手紙を読む場面へと、舞台は間断なく展開していく。

タイプスのパク・バンイルのシェイクスピア劇演出は正統派だと常々思っているが、テクストに忠実に展開させながらもそこに少しひねりをきかせてあり、それを期待してこれまでも観てきた。

スピーディな展開の中に、台詞の遊びがあり楽しませてもくれる。

堂々としたダンカンを演じる新本一真が、勝利したマクベス、ダンカンを胸に抱きしめる時、この二人がともに新本一真より大きいので、「大きいなぁー」というような台詞を口にし、場面を和ませ観衆を笑わせるのもその一例であった。

また、王位に就いたマクベスの晩餐会の日にバンクォーが遠出をする時、そのバンクォーがマクベスに返事をするのに「はい」というのを繰り返し、三度目の「はい」、四度目の「はい」と言って、滑稽さの衣に包んで挑戦的に応えるところなども遊び心があって面白い。

演技面では、異色の経歴を持つ前島幹雄の門番役が目を引いた。京都の劇団の研究生を経て、俳優座の12期養成所に入所し、退団後は世界一周で76カ国を歴訪し、さらには1984年にサハラ砂漠の単独徒歩横断を世界初で成功し、2004年に俳優に復帰したという経歴である。

前島幹雄以外にも、老齢者の俳優の演技が気を和ませてくれた。

75歳の瀬川新一、この人はタイプスの舞台によく出演しているが、今回はスコットランド軍参謀という役で特に重要な役をするわけでもないが、マクベスに一万の軍勢が攻めてきたことを報告する場面で、ガチョウがきたか、そのガチョウ面を引っ込めろと言われ、おずおずと引き下がる姿などもこの人ならではの味があった。

またレノックスのその他を演じる石川雄大も、マクベスに年齢を問われ「19歳」と答えると「嘘をつくな」と言われ、「71歳です」と自分の本当の年齢を答えるところなども、そのとぼけた感じが面白かった。

とぼけた味の妙味で楽しませてくれる老人俳優に対して、若手俳優の面々は意気がよく、すがすがしかった。

特に目立ったのはマクダフを演じた、元気溌剌な青山治と、バンクォーを演じた長身の鷲見亮。しかしながら、青山治は上演二日目にして少し声が枯れかけていたのが気になった。

ちょっと変わった面白さを感じたのは、ヘカテを演じた友重舞香。フリフリのピンクの衣裳で魔女たちよりもずっと若く、お茶目な女の子といった感じで、後ろ回転しながら登場し、柔軟でしなやかな身体で声もキンキン。プログラムのキャスティングを見て驚いたのは、彼女はマクベス夫人の侍女役もしていたことであったが、まったく正反対の様相でプログラムを見るまでは分からなかった。

主役のマクベス、それにマクベス夫人を演じる庄田侑右と大竹一重は、台詞、演技とも完結したうまさがあったが、そこで完結しているところに逆に物足りなさを感じた。

それぞれに感じた問題点をあげると、まずマクベス夫人の夢遊病状態で歩き回る場面。この場面はマクベス夫人が寝室から出てくるところであるから、衣裳が正装のままであるのはどうかと思えるだけでなく、両手には真っ赤な手袋をしていたことである。血のイメージを伝えようとしていたとすれば過剰な細工といえよう。これは演技というより演出上の問題ともいえる。

マクベスについて言えば、マクベス夫人が亡くなった後に口にする有名なトゥモロー・スピーチ。シートンからマクベス夫人が亡くなった知らせを聞いた後、このトゥモロー・スピーチを口にするまでにずいぶんと時間をかけ、沈黙が続く。完結したうまさというのは、特にこの場面であったが、よくできているのだけれど感動の気持がわいてこなかった。ひとつには、この台詞への過剰な思い入れがあってそれが却って邪魔をしている面があった気がする。

うまいと誉めておいて不満を口にするのは過剰な要求のせいか?!

ともあれ、個人のプロダクションで50回を迎えた快挙に賛辞を表したい。

観客に出演者の関係者が多かったことに負う面も大きかったとは思うが、平日の昼間だというのに客席がほとんど埋め尽くされていたのも喜ばしい限りであった。

上演時間は休憩なしで2時間。

 

(訳/小田島雄志、演出/パク・バンイル、11月20日(火)昼、両国のシアターXにて観劇。
座席はD列10番)

 

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