このプロジェクトの公演を観るのも今回が三度目になる。
学生たちの活躍が楽しみなこのプロジェクトであるが、過去二度の観劇日記を見直してみると、個人的な印象としてボトムやレオンティーズを演じた薄平広樹君の活躍に焦点が当てられていた。
今回は特別に飛び抜けた学生はいなかったが、登場人物の顔ぶれにこれまでの出演状況が気になって過去のプログラムと照らし合わせてみた。
一番目についたのが今回シーリアを演じた3年生の岡本摩湖さん。1年生の時に『夏の夜の夢』でヘレナ、昨年の『冬物語』ではハーマイオニを演じており、重要な役を演じてきているだけあって上手だと感じた。
男子学生では昨年フロリゼルを演じた3年生の川村隼斗君が今回はジェイクィズの役。
ヒロインのロザリンドを演じた3年生の和田彩菜さんと、ちょっと目立った演技をした道化タッチストーンを演じた4年生の一橋純平君などは初登場でおいしい役を巧みに演じていて好ましく思った。
プロの協力指導があるとはいえ、すべて学生たちの手作りの芝居、演出、構成、舞台装置、照明、音響、衣裳、どれをとっても素晴らしい出来栄えだと感心した。
出だしの部分では、後方に衣裳だけの操り人形をかかげ、人形仕掛けのようにして動く半仮面を付けた赤と緑の衣裳に分かれた人物たちが登場し、舞台を動き回った後、赤と緑が分かれてハの字型に広がって挨拶を交わす。この赤と緑は、後に登場するシーリアとロザリンドの衣裳の色であり、その点に置いては予兆を示しているともいえるだろう。そこに特別な意図があるのかどうかは残念ながら分からない。
舞台構成は、後方が額縁舞台になっていて、幕で仕切られていてそこから登場人物が登場してきたり、半開きされた状態で舞台の場となったりする。宮廷を中心とした場面の演技はその額縁舞台の前の広い場所でなされる。今額縁舞台の有効な使い方が実にうまいと思った。
場面がアーデンの森に移ると、額縁舞台は全開されてすべてが森の舞台となる。
シェイクスピアの<森>についてはシェイクスピア学者によっていろいろな意味づけがなされているが、ここではそれをさておいて、この舞台での印象を語れば、明るい、解放的な場所となっていた。
ギャニミードに扮したロザリンドが、森の中でオーランドの恋人役としてロザリンドを演じる二重の演技では、オーランドに対してロザリンドを演じる時にはまったく女ことばになっていて、えっと驚かされた。この場面は、ロザリンドがギャニミードに男装しながらもロザリンドを装っているので、まるっきり女ことばにするのはどうかと思った。
この本の台本は、二十数名からなる学生たち、その名もコラプターズが訳した台本であり、それなりの意図があるとは思うのだが、善し悪しは別にして気になったので、若者の感覚として普通であるのかどうか、学生諸君の印象を聞いてみたいところである。
総括すれば、全体的にまとまりのよい楽しい舞台であった。
来年の公演が早くも決まっていて『ヘンリー四世』。一部・二部の記載がないので多分まとめたものになるのであろう。楽しみな演目である。
11月10日(土)昼、明治大学駿河台キャンパス・アカデミーホール、座席:Eブロック
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