高木登 観劇日記2012年 トップページへ
 
  劇団山の手事情社公演 『トロイラスとクレシダ』      No. 2012-021
 

舞台装置は、中央に二メートル四方ほどの大きさの開帳場風に傾斜を持たせて二つの板、背後には下手から上手にかけて傾斜した艀と本船を結ぶような細い橋。その奥のホリゾントは上手側にブラインドのような大きな横長の長方形が抽象的なイメージを描いている。全体的にメカニックな感じの舞台である。

プロローグの序詞役に代わって、七、八名からなるコロスが、ヘレナを略奪されたギリシア軍がトロイを攻めて早や七年が過ぎたというこの物語の発端を語る。

この作品のキャッチフレーズとして、「セックスと戦争」をあげて、戦争の原因としてのセックスを強調している。

トロイ軍とギリシア軍を犬(鳴き声からすると狼と言った方がよい)とカラスに見たて、頭にそれと示すものを付け、戦闘の合図や退却の合図の際には、それぞれの鳴き声で表わし、両者の区別をつけている。

登場人物の台詞は狂言風の言い回しで、所作は狂言風というよりパントマイムのような、緩慢で鋭角的で様式的な動きをする。

所作や言い回しが和風的な調子に対して、音楽は一転してジャズをアレンジしたもので、ダンスの激しいリズムが動きの単調さに変化を添える。

登場人物の相関図は、圧縮され過ぎていて物語全体を理解していないと十分にくみ取れないと思う。

それにシェイクスピアの原作そのものが、中心がなく終わり方も釈然としないので、舞台に乗せてもつかみどころのない作品で、観終わっても茫漠とした印象しか残らない。

シェイクスピア劇を専門に取り組んでいるわけではない劇団山の手事情社が、このような作品に挑んだこと自体、勇気ある挑戦だと思う。

この物語の中心人物を特定するのは難しいが、タイトルからすれば当然トロイラスとクレシダということになるであろうが舞台上ではあまりそのように感じない。しかしながら、この舞台のカーテンコールの並びからすれば、この二人とパンダラスを中心としたのであろうかと思わせた。

台詞回しと動きの緩慢さで、途中睡魔に何度も襲われはしたが、演出の工夫には賛辞を呈したい。

上演時間は、休憩なしで1時間40分。

座席は、最後尾の右端という舞台からは最も遠い席であったが、劇場の構造からそれほど遠くには感じなかった。

 

(構成・演出/安田雅弘、美術/関口祐二、10月27日(土)昼、
東京芸術劇場・シアターウエストにて観劇、L列21番、4,500円)

 

 

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