パックと芥子の種を別にして、妖精たちを6歳から14歳までの子供が演じるというのが珍しい演出だと思った。
パックを除く妖精たちが、開演とともにパックのエピローグの台詞をプロローグとして語ったのも新鮮であった。
パックのエピローグは、劇の終わりにもパック自身によって語られるので、円環的な感じを与える効果もある。
妖精たちのプロローグの後、ヒポリタが一人だけで登場し、アマゾンからアテネという田舎町に連れてこられた屈辱をののしるが、アテネを田舎町として表現することに逆説的な感じがして面白かった。
そうやってののしっていたヒポリタであるが、シーシウスが現れて、彼女を武力で抑えたことに「ごめんね」と言って謝ると、彼女は「いいのよ」と言って先ほどまで一人のときに吐いていた悪態をころりとひっくり返してしまうのがまた面白くもおかしくもある。
二人の全体的に気取りのない日常会話的なせりふが、原作の調子を変えて、新鮮に響くだけでなく、笑いを誘い、楽しい雰囲気を作り出していた。
シーシウスとヒポリタ、妖精の王オーベロンと妖精の女王タイテーニアは、それぞれ別の俳優が演じるのは、昨年上演した時の演出と同じである。
今回は原作では台詞だけに登場するインドの少年を実際に舞台に登場させたのも特徴の一つであった。
上演時間は休憩なしで1時間40分程度と短く、そのため台詞のカットもかなりあるが、なかでもボトムがロバの夢から覚めたときの台詞のカットは、ずいぶん思い切ったカットだと思った。
聞きどころの台詞のカットがあるものの、濃縮された舞台であったといえる。
演じる側の溌剌とした気持が伝わってきて、見る側もこの舞台を楽しむことができたと言うだけで、ほかに多くを語るより事足りるだろう。
今日は、強風のためJRが各線で遅延し、そのため遅れそうな観客のため開演時間を10分遅くするという配慮がなされたのも、主宰者の思いやりを感じた。
訳/小田島雄志、演出/パク・バンイル
3月31日(土)13時開演、両国・シアターX、座席:C列10番
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