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  明治大学シェイクスピアプロジェクト 『冬物語』      No. 2011-026
 

<明治大学文化プロジェクト>から、<明治大学シェイクスピアプロジェクト>に名称を変更しての新しいスタートが切られた。2004年の第一回公演『ヴェニスの商人』から、昨年の『夏の夜の夢』まで、一貫してシェイクスピア劇を上演してきているので、名称変更も必然の成り行きと思える。そして、第六回公演『ハムレット』から、学生翻訳チーム「コラプターズ」による翻訳台本を使用し始め、今回がその三作目となる。

昨年初めてこのプロジェクトの上演を観て、そのハイレベルに驚嘆したものだった。演技、台詞力、舞台装置、振付、衣裳など、プロの指導を受けることで、非常に質の高いものに仕上がっていた。

学生の力だけではなく、プロの力を借りてのコラボレーションが実にうまく生かされており、加えて学生たち自身による翻訳も瑞々しい新鮮さがあった。

今回も同じような感銘を受けたが、すでに昨年のレベルが脳裏に刷り込まれていて、もはやそのうまさに驚嘆するということはなかったが、観ていて安心できる安定感があった。

今回際立ってうまいと思ったのは、リオンティーズを演じた薄平広樹君。

昨年の観劇日記を開いてみると、前回も彼を絶賛している。昨年は『夏の夜の夢』のボトム役であったが、その時の印象に、「もう円熟した役者(?)と言ってもいい」と書いている。彼のこのプロジェクトでの経歴は、第五回公演『十二夜』でのマルヴォーリオ、第六回の『ハムレット』でクローディアス、昨年はボトムを演じ、今回は主役のリオンティーズを演じた。

リオンティーズの見どころは何と言っても彼の唐突な嫉妬の妄想場面で、その妄想をどのように不自然なく演じるかでこの劇の成否が左右されると言っても過言ではない場面をうまく演じた。

ハーマイオニとポリクシニーズの二人とリオンティーズとの距離によっても演技の工夫が変わってくるが、この距離も絶妙なバランスで、二人の仕草は見えても話し声までは聞き取れない位置にリオンティーズは立っている。

ハーマイオニの説得がうまく進んでいるかを気にかけて見るが、二人が手を絡ませたりしてなれなれ過ぎるのが気になり、リオンティーズは舞台正面を向いて観衆に語りかけるようにして二人の間を疑う傍白を述べ、観衆をそのような気持に引き込んでいき、彼の妄想を自然に感じさせることに成功していたと思う。

演技の面では、この作品で得をする役はオートリカスだと思うが、前半部の暗い場面から後半部の毛刈り祭りの明るい場面にいっそうの明るさと軽快さをもたらす彼の出番は待ち遠しいものだが、伊藤弘信君のオートリカスも楽しい気分にさせてくれる。

演出面では前回もその工夫に感心したが、今回も全体的な面以外にも、細かいところでそのうまさをみた。

マミリアスが遊んでいた大きなボールは、嫉妬を表象する緑色で、このボールを嫉妬の妄想に狂うリオンティーズがマミリアスから受け取って手にするところなどは、はっとさせられるうまさがあると思った。

少し変わって点で意表を突かれたのは、マミリアスを演じる三森伸子さんが、「時」を演じたことだった。

翻訳も斬新な大胆さとみずみずしい若さある台詞となっていると思ったが、ハーマイオニの立像が動き出す場面でリオンティーズが口にする、立像が動くならたとえ悪魔の仕業であろうとも許すという台詞では、悪魔学などの著書もある国王ジェイムズ一世のことが思い浮かんだ。これは舞台の上での台詞によって気付かされたことである。

『冬物語』はジェイムズ国王の前でも上演されているだけに、この台詞にははっとさせられただけでなく、新たな発見をみる思いであった。

大勢の羊飼いたちの踊りの場面や打楽器の生演奏なども十二分に楽しむことができた。

座席は、舞台からはかなり離れた2階席の3列8番だった。

上演時間は休憩なしで2時間30分。

 

(演出/川名幸宏(文学部4年生)、翻訳/コラプターズ、監修/横内謙介(扉座)、
11月19日(土)昼の部、明治大学駿河台キャンパス、アカデミーホールにて観劇)

 

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