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  子供のためのシェイクスピア 『冬物語』              No. 2011-016

  <雑司ヶ谷>のグループでの原書講読でちょうと読んでいる作品だけに興味と期待をもって観た。
 『冬物語』では、個人的に見るべきポイントとして、レオンティーズの嫉妬の場面、ハーマイオニの彫像の場面がどのように演じられ、演出されるかというところにどうしても集中する。
 そのレオンティーズの嫉妬の場面については、「嫉妬」という言葉を使わず、終始、レオンティーズの「妄想」としていたのは、分かりやすくてよかったと思う。
'jealousy'は「嫉妬」というより「妄想」として当時使用されていたことからも適切であると思った。ただ、このこの演出ではあまりシリアスな感じはしなかったし、演出としてもそのような扱いに見えた。
 ハーマイオニの彫像の場面でも同じことが言えた。
 ポーリーナを演じる伊沢磨紀がポリクシニーズも演じているので、ポリクシニーズはこの場面に立ち会うべき時に不在とならざるを得ない。それで彫像が動き出す前に、レオンティーズの気持ちを静めるための休憩時間を取り、ポーリーナが引っ込んで、早変わりでポリクシニーズとなって登場し、別れの挨拶をしてそそくさと引き下がる。
 そこに笑いの時間が入って、ハーマイオニの彫像が動き出すという荘厳さの観劇が亡くなる。しかしながら、全体のバランスから見て、これはこれで自然だと思った。
 子供のためのシェイクスピアということで、決して子供におもねった演出にしているわけではないが、子供が見て分かるような設定にしているのだと思う。
 レオンティーズを演じる佐藤誓がオートリカスをも演じるという役柄の落差も面白く、また、オートリカスは一人で登場するのではなく、息子(ハーマイオニを演じるキム・ティが演じる)を引き連れているという設定も面白い趣向だと思った。
 このシリーズの常連である戸谷昌弘がアンティゴナスと羊飼いを演じ、劇団AUNの谷畑聡が初出演で道化とダイオンを演じた。戸谷昌弘は老け役をやってもその演技はいつも若々しい。
 他の出演者は、カミローに山口雅義、フロリゼルとクリオミニーズに尾崎右宗、パーディタとマミリアスに初参加の太宰美緒。
 毛刈り場面の冒頭の場面は、雑司ヶ谷の会読でちょうど読む個所になっていたので、台詞や場面がストレートにリアルに入ってきた。


小田島雄志訳による脚本・演出/山崎清介
7月16日(土)13時開演、渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
チケット:(A席)4800円、座席:1階3列10番

 

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