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  東京シェイクスピア・カンパニー公演 『ハムレット』      No. 2011-004
 

ハムレットの謎と魅力とは何か?!

ハムレットという人物の謎に迫るため、東京シェイクスピア・カンパニー(TSC)は、ハムレットを三人の俳優で演じるという珍しい趣向で探求する。

それも一つの場面に同時に二人のハムレットを登場させ、二人が時に交互に台詞を語る場面がいくつもある。

そして何よりも特徴であるのが、軸となるハムレットを演じる牧野くみこを除いて、他の二人がそれぞれに他の重要な人物を演じるということで、そこにハムレットの人物像を追う鍵が潜んでいるように思わせる。

他の二人のハムレットのひとりは、ノルウェー王子フォーティンブラスをも演じる齊藤嵩也、もう一人はレアティーズを演じる大須賀隼人である。

理想の軍人であり理性的かつ行動的なフォーティンブラスと、激情的で直情的なレアティーズを演じる俳優にハムレットをも演じさせるというところに、ハムレットの分身という意図的なキャスティングを感じるのは思い過ごしではないだろう。

ハムレットという謎の人物を三人に解体することで、他の二人の人物像から観客は視覚的にハムレットが内面に矛盾した人物を抱合しているということ、すなわちハムレットの人物像のタイプを演繹することができる。

そこから演繹されるハムレットは、病理学的には「解離性同一性障害」(=多重人格)を抱えた人物ともいえる。

その多重人格性を三人の俳優が演じることで視覚化させたという点において、新しい試みであると思う。

しかし事はそう簡単に割り切れないのがハムレット。ハムレットその人が演じる人物でもあるからだ。

父の亡霊から復讐を命じられたハムレットは自分の真意を覚られないようするために佯狂を演じることになるが、それは自らを脚色した人物とすることで、本来の多重人格とは異なり、演技する人格である。

逆説的表現となるが、ハムレットを三人に解体することで謎が解けたかと言えば、そうではないところに面白さがある。

今回の公演では9人の俳優で20余の役を演じさせるキャスティングの面白さに特徴がある。

三人のハムレットも然りであるが、そのほかでは、つかさまりがガートルードとオフィーリアを演じ、ポローニアスを演じる田山楽が狂乱の場のオフィーリアをも演じるという意外性、狂乱のオフィーリアがどこかひょうひょうとした趣のあるところが面白いと思った。

ハムレットやフォーティンブラスという実直な人物を演じる一方でローゼンクランツを演じる齊藤嵩也と、その相手役のギルデンスターンを演じる榛葉夏江のコンビが、コミカルな演技で舞台を楽しくしてくれた。

ホレイショーを演じる関野三幸は、個人的印象として演技や台詞に素人ぽさを感じる俳優なのだが、ハムレットが死んだ後(この時のハムレットは齊藤嵩也)、胸に抱き寄せ慟哭する姿は、彼の実直性が演技を超えた悲しみを伝えていて感動を受けた。

そのほか主な役では、重厚な趣と軽妙さをあわせもつ原元太仁がクローディアス、亡霊や墓掘1などを台詞力に重みのある丹下一が演じた。

牧野くみこのハムレットは余分な言葉をつけずに、賛辞だけを送ろう。

上演時間は休憩なしで2時間。

 

(超訳・演出/江戸馨、作曲・演奏/佐藤圭一、神楽坂のシアター・イワトにて、
2月26日(土)昼の部を観劇)

 

 

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