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  project ON THE ROCKS第5回公演 『リチャード三世』      No. 2011-001
 

関場理一先生の<シェイクスピアの森通信>でこの公演を知った。

プロジェクト・オン・ザ・ロックスによるシェイクスピア・シリーズは今回が4作目であることも今回の公演案内によって初めて知った。

2008年の『ヴェニスの商人』が最初で、09年に『冬物語〜新諸国奇談』、10年には『ハマの陽気な女たち』(『ウィンザーの陽気な女房たち』の翻案劇)を上演している。

10年には別に第4回公演として『DREAMS7』を上演しているが、これはシェイクスピアとは関係ない。

上演記録では2回までが演劇集団柴田組X劇団UPの合同公演と銘打っていて、3回目以降は特に合同としていないが、今回の出演者の所属を見ると、柴田組と劇団UP、その他劇団の所属、フリーという構成になっている。

劇団員、出演者は若い世代が多いが、演出の田中知己と脚本台本脚本台本の布施博一は70代後半という。

これまで自分の情報源でこのシリーズに気付かなかったのは残念であったが、<森通信>で知ることができたのは幸いであった。

いつもそうであるが、初めての劇団でのシェイクスピア劇を見る楽しみの期待感が今回もあった。

舞台装置を見たとき、その期待感はいっそう高まった。

舞台中央に二段構成の階段がしつらえてあり、そのてっぺんには王座の椅子が白く、銀色に光ってあり、ホリゾントは野球のホームベースのような形をして、淡い薄紫色の照明で今にもくっきり浮かび上がってくるようである。

階段の頂点にある王座の椅子は、リチャード三世が王位を昇りつめていくシンボルのようにしてそこにあるのが、この劇の展開を予兆させる。

階段は可動式となっていて劇の進行によって側面に移動したり、階段の中央から半分が左右に分かれたりする効果的な装置となっている。

田中潤担当の音楽は、ホルストの「惑星」からだというが、この劇によくマッチングしていてドラマチックな感じを高め、当然のことながら音楽も重要な要素であることを改めて感じた。

翻訳は布施博一のオリジナルになる上演台本で、『リチャード三世』を初めて見る観客にとってはその説明的補足の台詞によって、理解しやすいものになっていると思う。

反面、この劇を知るものにとっては説明的過ぎ、台詞の緊張感が薄れ、劇の展開そのものも平板になっている気がした(少なくとも自分にはそのような感じであった)。

オリジナルな演出(脚本)としては、エドワード王の二人の王子の殺し屋役に、貧民窟出の女で赤毛のジェーンという設定と、リチャード三世がリッチモンドに殺され倒された最後の場面で、気の狂ったマーガレットが登場しリチャード三世に悪態をつく場面を作り出しているのが特徴的であった。

全体的には非常に丁寧な作りだと思うが、それぞれの場面におけるクライマックスのインパクトに乏しく、先にも書いたように全体としては平板になって、メリハリに欠ける気がした。

リチャード三世を演じた柴田好之は、いわゆる類型的な容姿(背中にこぶを背負って、足を引きずって歩く姿)をしたリチャード三世を演じ、若さを感じさせる瑞々しさのある好演であったが、これまでいくつかのリチャード三世を見てきた自分としては、凄味に乏しく、多少物足りない気がした。

その分、悪を演じるリチャード三世への愛おしさの感慨も少なかった。

途中休憩15分を挟んでの3時間半という堂々とした舞台であった。

 

(上演台本/布施博一、演出/田中知己、美術/松野潤、池袋・あうるすぽっとにて、1月8日(土)昼の部観劇)

 

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