一言でいえば「驚嘆」という形容に尽きます。
プロの指導を受け、プロとのコラボレーションとはいえ、学生の力でこれほどまでにレベルの高いものとは正直いって思ってもいませんでした。
11人の学生たちによる翻訳、そのグループの名も『十二夜』の道化、フェステの台詞からとって「コラプターズ」、
'I am indeed not her fool, but her corrupter of words'(俺はお嬢様の道化じゃない、ただ彼女の言葉を堕落させてるだけさ)
その名の由来は、「言葉を一度壊して新しく創造しよう」という意気込みを込めて命名され、翻訳にあたっては「まず原文を忠実に読むこと」、そして「学生になじみある表現」であることを第一として、原文から絶対に外れないことをモットーにした姿勢を貫いています。
その翻訳の台詞は分かりやすく、しかも温かみを感じさせ、親しさを覚えさせるものでした。
学内公演といえば観客と出演者の一体感で舞台が盛り上がって高揚感が募るものですが、今回もその例にもれず、出演者との共有感を十二分に楽しむことができました。
シーシウス公爵とオーベロンを演じた正木拓也君の台詞力は堂々たるものであり、アテネの職人たちのパート演出も兼ねた薄平広樹君のボトムの演技は絶品としか褒めようがないほど観客を楽しませ、喜ばせてくれました。
薄平君の演出ノートによると、彼は第5回公演ではマルヴォーリオを演じ、第6回公演では『ハムレット』のクローディアスを演じたといいますから、もう円熟した役者(?!)と言ってもいいような気さえします。
また北原由貴さんによる妖精の演出は、マックス・ラインハルトとウィリアム・ディーターリー監督による映画『夏の夜の夢』(米、1935年)の妖精を彷彿させるものがある一方で、それとは異なった新鮮味がありました。
演出で注目すべき特徴はこの演出の分担でした。
文学部2年生の山光涼君が総合演出を務め、文学部3年生の薄平君と北原さんがそれぞれ、職人と妖精のパート演出をするというコラボレーションが有機的に作用して、舞台の立体感を高めていたように思われます。
妖精の王様オーベロンとパックの衣裳にも注目すべきものがありました。
二人とも白い衣裳ですが、日本の古代を感じさせる衣裳で、特にパックの衣裳は神話の世界から抜け出てきたような印象を与えるものがあり、異界の効果を出していました。
パックのエピローグの台詞の後暗転して、間をおいてオーベロンをはじめとして妖精たちがろうそくの灯を手にして舞台に登場するエンディングも印象に残る演出でした。
休憩なしの2時間30分が、夏の夜の夢のようにあっという間に過ぎました。
今回この劇を観ることができた幸運は、この劇の翻訳者コラプターズのメンバーの一人でもある青山学院大学の奥景子さんの紹介によるものでした。
このようの明治大学の文化プロジェクトが、自校のみならず他校のスタッフの協力をも取り入れての制作という点においても開放的であることに敬意を表したいと思います。
今後もますますこのプロジェクト活動が発展することを期待しています。
11月12日(金)夜、明治大学駿河台キャンパス、アカデミーホール
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