高木登 観劇日記トップページへ
 
  子どものためのシェイクスピア No.15『マクベス』      No. 2009-023
 

1995年、当時のパナソニック・グローブ座で、『ロミオとジュリエット』から始まった子どものためのシェイクスピアが今年で15年目を迎える、その過ぎ去った歳月の早さに驚く。手元のプログラムで確認すると、僕は、シリーズ3回目の1997年上演の『リア王』から毎年欠かさず見続けている。

さて、シリーズ15回目の節目を飾る作品は、文学座の石田圭祐を迎えての『マクベス』。

石田圭祐という特異なキャラクターの俳優が好きであるという理由だけでなく、子どものためのシェイクスピアX石田圭祐Xマクベスという組み合わせが大変面白く感じ、楽しみにしていた。

その期待を見事に実現してくれたということでは、大変満足な舞台であった。

その面白みを倍増しているのは、山崎清介の大胆な改編と構成による演出が大きくものをいっている。

お決まりの黒いソフト帽に黒いコートとクラッピングで、登場する全員による三人の魔女の台詞の輪唱で始まる。

勢いよくコートを脱いでまず登場するのが、彩乃木崇之扮するダンカン。

客席から兵士が駆け寄ってきて、上手の舞台前面でダンカンに戦況を報告する。

マクベス、バンクォー(戸谷昌弘)の戦いぶりの報告は、実際に彼らの戦闘ぶりを舞台に繰り広げ、視覚化される。

スピィーディな動きと活劇でまず舞台に引き込まれる。

激しい戦闘場面の後。

舞台中央のいつものセットである机の上に、伊沢磨紀、キム・テイ、若松力が扮した三人の魔女がすました顔をして横並びで、正座している。

髪はマッシュルームのようなおかっぱ頭、ピンクがかったベージュ色のふりふりの衣裳を着て、目を大きく見開いてくるくるさせ、澄まして並んでいる姿を見て、それだけで子どもたちの笑い声が聞こえてくる。

役者の数は8人。いつものようにひとり何役も演じるわけだが、今回絶妙な組み合わせだと思ったのは、マクベスと対応する人物、マクベス夫人とマクダフの大きな役を伊沢磨紀が演じるキャスティング。

今回、山崎清介の大胆な改編が目立つのが特徴だと書いたが、その一つとして、マクベスが王位に就き、宴会を催す場面を会議の場に変え、そこに暗殺されたバンクォーがあらかじめマクベスの席に座っており、動揺して怯むマクベスに対して「本当のことを話してもいいのだな」と恫喝し、静に退場していく趣向をこらしている。

さらに大きな演出上の特徴として、最後の場面。

マルカム(若松力)がマクベスの王冠を手にするとき暴君を予兆する台詞。

そして父バンクォーを殺され逃亡していたフリーアンス(クム・テイ)が見つけ出され、連れ戻される。

すでに殺されて舞台から消えているマクベスを演じた石田圭祐が、黒いソフト帽と黒いコートの黒子姿で、魔女に代わって、フリーアンスをやがては王を産み出すお方、と称える。

この象徴的ともいえる追加の場面に、山崎清介の意図が集約されているように感じた。

今回、座席が3列の13番で、最前列でしかも中央の席。石田圭祐のマクベスが、マクベス夫人を失くして「明日、また明日」の台詞(これはマクベスではなく、黒子がコーラスとなって語る)の場面のあと、舞台前面に腰かける姿を目の前に見据えることになり、なんとも言えぬ感激。

いつものように、今回の舞台が最高に面白かった、と満足させられるものであった。

 

(訳/小田島雄志、脚本・演出/山崎清介、7月20日(月)昼、紀伊国屋サザンシアターにて観劇)

 

>> 目次へ