いつも少人数で多彩な人物を演じるITCL(インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドン)の来日公演を毎年楽しみにしている。
今回は6人で演じる『ロミオとジュリエット』。
6人であるけれども、感覚的には8人ぐらいで演じているように感じる。
それだけ人物を多彩に演じ分けているということでもある。
人物の演じ分けには衣裳をはじめとした早変わりが求められるのだが、それがまた劇をコミカルに盛り上げる効果にもなっている。
今回も女優は二人。
乳母を演じるナタリア・キャンベルとジュリエットを演じるレイチェル・リンズ。
ナタリア・キャンベルはコミカルな役がよく似合う女優さんで、開演冒頭の場でキャプレット家のグレゴリや、ヴェローナーの大公をも演じる。
彼女の演技はほとんど主役を食っていて、見ていて一番面白い。
女優が二人なのでキャピュレット夫人をリチャード・クルーハンが演じる。
その演出が面白い。
舞台後方にはカーテンで仕切った楽屋部屋となっていて、道化役のピーターや乳母がそのカーテンを引くと、キャプレット夫人が沈着憮然とした、すました表情で、どんな場面でもその姿勢を決して崩さず、椅子に腰かけて座っている。声色も変えて、少し高音でしゃべるので女性の声のように聞こえる。
リチャード・クロッドフェルターがベンボーリオとキャピュレット、リチャード・エドが修道士ロレンス、ティーボルト、キャプレット夫人を演じるリチャード・クルーハンはモンタギュー、マキューシオやパリスなど演じ、ロミオは昨年『ハムレット』でレアティーズを演じたダン・ワイルダーが演じた。
ジュリエットを演じるレイチェルは美しい女優さんだが、それは成熟した美しさで、14歳のジュリエットの疾走する若さ、未熟さがないのが逆に少し物足りない気がした。
キャプレット家の召使ピーターはコメディア・デアルテの半仮面をつけているので、登場人物が入れ替わる役の中で誰が演じているのか、うっかり見過ごして結局誰だかわからないままで終わった。
全体的にはいつものようにスピード感あふれる展開で、途中の休憩15分を挟んでの2時間45分の上演時間があっという間に過ぎたという感じであった。
演出/ポール・ステッピングズ
5月18日(月)、早稲田大学大隈講堂
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