人形劇団ひとみ座の創立60周年(創立は1948年)を記念して、シェイクスピア三部作を企画し、今回の『マクベス』は、06年の『リア王』上演に続く第二弾となる。
次回第三弾の公演予定は、来年の3月までのスケジュールには入っていないので、第一弾と第二弾の期間があいているように、第三弾もかなりの熟成期間を置いての公演となるように思われる。
人形劇団ひとみ座は、これまでにも数多くのシェイクスピア作品を上演してきているが、なかでもこの『マクベス』は、同劇団がシェイクスピア作品を初めて人形劇化させた作品で、その上演は1961年にまでさかのぼる。
それだけに60周年記念公演としてふさわしくもあり、またかなりの思い入れのある上演だという気がする。
シェイクスピア作品の人形劇化においては、動物をキャラクターにした人形劇はこれまでにもあったが、今回のこの『マクベス』では、なんと昆虫が人形化されているというユニークなものである。
プロローグの場面とも言うべき舞台で、魔女の壺の中で虫の王権争いを繰り返す。
虫の争いでは、スコットランド王国の王となったケネスとその息子が親族のダンカンに殺される。
ケネスの孫娘が後のマクベス夫人となる。
そのマクベスがダンカンを倒して虫の王国の王者となり、魔女がマクベスを壺の中から引き出したその姿は、'鬼やんま'。つまりトンボ、である。
このプロローグに引き続いて、人形遣いの黒子たちがコーラスとなって唱和する。
「しかばねを重ねて、
しかばねを重ねて」
.....
「きれいは汚い、汚いはきれい」
このリフレインは最後にもコーラスとして繰り返される。
「しかばねを重ねて、しかばねを重ねて.....
次に殺されるのはマルカム。
バンクォーの子孫が王となる。その王も殺される.....
きれいは汚い、汚いはきれい」
この主要テーマ、あるいはモチーフともなっている「しかばねを重ねて」という言葉が象徴するように、マルコムに攻められたマクベスの城では、そのマルコムの軍隊に、医者も侍女も、門番までもがこの舞台の上で殺戮される。
登場人物が昆虫だというのも面白いが、魔女の動きが人形ならではの軟体動物的な揺らめきの動きがあって印象深いものがあった。
上演時間は途中15分の休憩を挟んで2時間5分。
今年は、偶然のようにして、今回を含めて3作品ものユニークな『マクベス』を見る機会を得た。
この後も今年は、子どものためのシェイクスピア・カンパニーによる公演が7月に予定されており、9月から11月にかけては能登演劇堂で無名塾の『マクベス』がロングラン公演されるという楽しみがある。
訳/小田島雄志、上演台本/友松正人、演出/藤川和人、人形美術/片岡昌、舞台美術/大沢佐智子
音楽/やなせけいこ、3月27日(金)14時開演、俳優座劇場、チケット:4500円、座席:7列10番
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