― 松永弾正久秀をマクベスに設定 ―
マクベスを松永弾正久秀に置き換えた着想が面白い。
BASARAは、「婆娑羅」が「遠慮なく勝手に振る舞うこと」の意味があり、ここでは下剋上を指しているのだろう。
黒澤明監督は映画で『蜘蛛の巣城』や『乱』でシェイクスピアを日本の戦国時代に置き換えたが、史実と虚実を巧みに錯綜させている。
松永久秀は下克上最後の人物であり、主である三好長慶の子義興を毒殺し、将軍足利義輝を殺害したが、織田信長に降伏して一旦は仕えたものの背いて、最後はその織田軍によって滅ぼされる。
マクベス夫人は朝倉家から嫁いできたお艶の方、ダンカン王は三好長慶、バンクォーは細川玄信(長慶に追放された細川晴元か?)という設定で、多少歴史的人物の名前が脚色されているところもあるが、シェイクスピアの『マクベス』と史実をうまく融合させているところがうまく面白いと思った。
3人の魔女の扱いもユニークで、白い衣装で色が変化する玉を手にして、魔女というより妖艶な妖精のよう。
松永久秀と細川玄信の前に現れて将来を予言するのはシェイクスピアの『マクベス』と同じだが、この劇に登場する明智光秀と羽柴秀吉の前にも魔女が現われて、二人に将来天下を取る人と予言するのは歴史的事実にも符合させるという遊び心も加わって、奇抜なアイデアとして面白かった。
人物設定と時代背景を日本の戦国時代に置き換えただけで、中身はまったくシェイクスピアの『マクベス』と変わらない。
登場人物もこの手の劇としてはかなりの出演者数で、娯楽劇としても見ごたえのあるものだった。
城を襲われるマクダフ夫人にあたる役のお菊の方は、戦国武将の奥方らしく長刀を持って松永方と渡り合う場面などもなかなかの見どころであった。
織田信長や羽柴秀吉なども、その性格描写や人物描写がよく出ていて、歴史劇としても違和感がないものだった。
出演は、松永久秀に天宮良、お艶の方を加納幸和、細川玄信にTV「3年B組金八先生」の出演でなじみ深い森田順平、お菊の方に植本潤など多彩な顔ぶれ。
上演時間は途中15分の休憩をはさんで2時間15分。
座席はC列6番で、最前列であった。
意外だったのは、9割近くが女性の観客だったこと。
作・演出/脇太平
3月7日(土)13時開演、俳優座劇場、チケット:5800円、座席:3列6番
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