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  シェイクスピア・シアター公演『ヴェニスの商人』     No. 2008-018

 

シェイクスピア・シアター2008年秋の公演は、『マクベス』と『ヴェニスの商人』の2演目で、今回は時間の都合もあって『ヴェニスの商人』を選んだ。

いつもながら舞台には何もなく、道具としては椅子と箱選びの箱が登場するだけのセリフ中心の劇である。

ずっと見続けてきているのでキャステイングも大体推察できてほとんど間違うこともないのだが、今回はポーシャを演じる住川佳寿子と道化役ラーンスロットを演じる木村美保が想像通りであったぐらい。

シャイロックの得丸伸二、モロッコの大公やテューバルを演じた内田聡明、それにアントニーの押切英希などはこれまでシェイクスピア・シアターで見ていなかったので想定外であった。

反面この三人の参加でこれまでとは違ったアクセントの効果を感じた。

調べてみると、内田聡明はシェイクスピア・シアターのOBということが分かったが、得丸伸二と押切英希は存外で、シェイクスピア・シアターの新人だとすれば、新人離れしているうまさと落ち着きがあった。

舞台の印象としては前半部が盛り上がりに欠けるような気がした。

特に箱選びの場面では、モロッコの大公やアラゴンの大公にもっと工夫があっても然るべき気がした。

小道具も何も使わないので、モロッコの大公のセリフに出てくる「この半月刀にかけて、トルコ王ソリマンを三たびまでうち破った」の場面も淡白で、物足りない所作であった。

セリフ劇としてみても全体的に総じて平板な舞台で、要所にその物足りなさを感じた。

たとえば、ジェシカとロレンゾー月夜の晩の二人の会話などもそうであった。

セリフに盛り上がりがなく、物足りない。

劇全体としては特にひねりもなく、オーソドックスに見られる模範的な(?)演出ともいえる。

つまり余分な解釈をつけた演出も所作もなく、シェイクスピアを「素」のまま味わうことができる。

教科書的という点では学校などで上演するのにもふさわしいのかもしれないが、もっと刺激やインパクトが欲しい。

最後の場面で、アントニーが一人残される場面でひとひねりあるかなと一瞬思わせるものがあったが、そのアントニーも早々に舞台を立ち去るので、その余韻を残さない。

そのなにも加えないというところが逆に新鮮と言えば新鮮である。

舞台ではポーシャの住川佳寿子に華やかさが出てきたし、ラーンスロットの木村美保に元気を感じる。

退団後もほとんど毎回出てきている松本洋平(今回はヴェニスの公爵、アラゴンの大公、老ゴボーの三役)もバッサーニオを演じる平澤智之と対になって舞台を盛り上げてくれる。

シェイクスピア・シアターの公演では、劇団員の成長や変化を見るのが楽しみの一つなのだが、その点においては、「シェイクスピア通信」をもっと充実させて、たとえば劇団員の消息なども詳しく知らせてほしい。

そういう意味ではもっと劇団のPRをすべきだろう。

若い劇団員の人は、それぐらい自分たちをもっと売り込むぐらいの前向きさがあってもいいと思うが・・・

 

(訳/小田島雄志、演出/出口典雄、11月17日(月)夜、俳優座劇場にて観劇)

 

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