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  子供のためのシェイクスピア・カンパニー 『シンベリン』      No. 2008-014
 

シェイクスピアを楽しく、面白く、愉快に演じてくれる子供のためのシェイクスピア・カンパニーが、03年に上演した『シンベリン』を再び舞台に連れ戻してくれた。

プログラムによれば、『シンベリン』が日本で上演されるのは今回を含めてわずか6度目という。

僕は今回の公演を含めて『シンベリン』を観るのが3度目となる。

最初は、93年、当時のパナソニック・グローブ座で英国のコンパス・シアター・カンパニーの来日公演、2度目は03年のこの子供のためのシェイクスピア・カンパニーによる初演、そして今回の再演が3度目である。

前回のキャステイングと較べてみると、ちょうど半数の4名が入れ替わっている。

初回から全公演出演の山崎清介、伊沢麿紀、戸谷昌弘、そして今回で11回目の出演の佐藤誓が前回に引き続いて出演。

今回初出演はヒロインのイモージェンを演じる石村みか。

2回目の土屋良太がピザーニオ、同じく2度目の出演の若松力がポステュマス、3回目出演の山口雅義がヤーキモとベレーリアスを演じる。

前回ヤーキモとベレーリアスを演じた佐藤誓は、今回はブリテン王シンベリンとローマ人フィラーリオを演じている。

前回クロートンを演じた戸谷昌弘は今回も同じ役を演じて大いに笑わせて楽しませてくれる。

伊沢麿紀は王妃とアーヴィラガス。彼女の王妃役も底意地の悪さをコミカルに表現し、見ていて楽しい。

観劇日記を見直してみると、前回の公演ではシンベリンを演じた間宮啓行が主役で中心人物となっているように記している。

それに較べて、今回は全員がそれぞれの役割で主役という印象が強い。

前回のことをまったくといっていいほど記憶していないので、今回の上演について簡単なメモをしておく。

舞台装置は、いつものようにいくつかの机と椅子。背景の舞台装置は峻厳な山、その頂上には魔法の国の城を思わせる明かり窓があり、そこから光が射している。その下部は、山の洞窟の入り口となっている(前回の舞台装置は、16角形のパオのような赤いテントであった)。

開演に先立って、舞台には遠雷の響きが聞こえてくる。

8人の黒マントの人物が、いつものようにクラッピングをしながら登場。暗転。

ポステュマスが舞台中央の前に倒れ伏している。

激しい雷音とともに、山崎清介が操る人形のジュピターが登場し、ポステュマスの運命を告げる。

これは原作では舞台の大詰め第5幕第4場のシーンである。

このように、あらかじめポステュマスの運命が観客に知らされて、舞台は第1幕の場面にさかのぼっていく。

前回もそうであったが、登場人物の早や変わりが見ていて楽しいし、面白い。

そこにいるべき人物が奥に引っ込んで衣裳を着替えるだけで違う人物に変化する、そこが余計に面白い。

たとえば、ブリテンの捕虜となったヤーキモが、二人の王子の育ての親であるベレーリアスに変わるとき。

ヤーキモは口実を作って奥に引き下がり、ヤーキモからベレーリアスに変じた山口雅義が大急ぎで登場してくる。ここで観客はワット沸くことになる。

山崎清介の演じる医師コーニリアスもローマの将軍リューシアスに早や変わりする。

そのみえみえの人物変化が面白く、ここでも観客は笑ってしまうのだ。

『シンベリン』は悲喜劇のロマンス劇ということになっているが、このカンパニーの上演では、喜劇的大円団で痛快ですっきりした、わかりやすい終わり方をしているのが特徴だと思う。

シェイクスピアがこんなに楽しく愉快に見られるのは、このカンパニーのおかげ。

 

(脚本・演出/山崎清介、7月12日(土)、池袋の‘あうるすぽっと’にて観劇)

 

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