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‘A Midsummer Night’s Dream’ (北九州芸術劇場・G2プロデユース企画・製作) No. 2008-012
 

〜 TheじゃなくてAなのが素敵 〜 

僕が生まれ育った北九州は、その昔「文化の砂漠」と言われていた。

その当時、僕は詩を書いていた。

その文化の砂漠といわれた北九州からの発信の演劇、しかもシェイクスピア劇ということで、非常に興味を覚えたのだった。

G2という記号のようなモノについては最初気がつかなかったのだけれども、この劇の翻訳者・演出家であった。

G2にとってシェイクスピア劇は初めてという。

初めてだけれども、これまで日本で上演されたことのないようなシェイクスピア本来の喜劇の構造で笑わせてやろうという意気込みで、翻訳から自分でやり直しての挑戦である。

シェイクスピア劇に初めて挑戦する場合、どういうわけかこの『夏の夜の夢』が多く選ばれるようだ。

ピーター・ミルワード先生によると、『夏の夜の夢』は最も日本人好みの作品だそうである。

これまでシェイクスピア劇と縁のなかった劇団もしくは演出家のシェイクスピア劇は、従来のシェイクスピア劇の因習にとらわれない大胆な発想の作品に遭遇することがよくあるので、非常に興味があるだけではなく、その意外性の発見の楽しみと期待がある。

もちろん予備知識がないので、余分な予見もない。白紙の状態での楽しみである。

そんなとき僕は観客の層で、その劇団なり、出演者への関心度を推測すべく、観客席の周りをぐるりと見渡す。

この東京芸術劇場・中ホールだが、全体的には若い女性が多い。比率的にも女性が7から8割がたであろうか。

シェイクスピア劇だからというより、出演者もしくはG2プロデユース作品という期待であるのが推察される。

そのことは開幕して、舞台が進んでいくと僕の判断が間違っていなかったことが判明する。

そして、僕の期待である、はじめてのシェイクスピア劇に挑戦する意気込みの面白さにも答えてくれる内容であった。

知らない劇団だからということで、出演者についてもまったく白紙の状態で事前に注意していなかったのだが、パックの役を植本潤が演じていたのは意外だった。ほとんどの出演者がシェイクスピア劇を始めていう中で、ハムレットやオフイーリアなどシェイクスピアの代表的登場人物をこれまでにもいくつも演じてきた植本潤のパックの演技は、またこれまでとは異にした趣があって実によかった。コング桑田が演じるオーベロンとの絶妙なコンビである。

そのシーシウスとオーベロンを演じるコング桑田の歌声には魅了されたが、元々がゴスペル歌手であるということが分かって納得!

台詞を演技者にとっつきやすいようにと大阪弁を取り入れていたのは、聞いている側にとっても台詞が直線的でないやわらかい響きをかんじさせてくれたのだが、これは大阪弁だからという問題だけでなく、台詞の聞きづらい箇所も一部あった。

シェイクスピアを知らない観客にもシェイクスピアの面白さと興味を呼び起こさせること間違いないという意味合いからもこの試みは成功といえるだろう。

僕にとっても新しい『夏の夜の夢』の体験であった。

上演時間は休憩なしの2時間15分。

 

(翻訳・演出/G2,6月22日(日)、東京芸術劇場・中ホールにて観劇

 

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