観劇日記 あーでんの森散歩道 高木登
 
  シェイクスピア・シアター・2008年春公演 『夏の夜の夢』      No.2008-008

 シェイクスピア・シアターの『夏の夜の夢』はこれまで何度となく観てきた。
 シェイクスピア劇を面白いと思わせてくれたのもシェイクスピア・シアターだし、『夏の夜の夢』の面白さもシェイクスピア・シアターを観てからだった。
 しかしそれはもう過去の話になってしまった。最近のシェイクスピア・シアターは、かつての若い劇団員の成長を見る楽しみもなくなってきた。これは、と思った劇団員は次々とやめていったし、ライバルがいてこそ切磋琢磨の演技も楽しめたのが、今はそのライバルが退団していくと、残った方の成長も止まってしまったようでつまらない。
 今回の『夏の夜の夢』は、ほんとうに退屈であった。台詞に覇気がなく、若さの勢いがない。それは様式化された台詞回しにも起因するのであろうが、最近はそれが、より変な風に強調されて粘液質的な感じがしてべたつく。
 かろうじて台詞が聞けたのは、住川佳寿子が演じるハーミアが「あやつり人形」と言われてヘレナにつっかかる台詞が、様式の殻を破った血の通った肉声であった。
 アテネの職人ボトムは、ここでは「トラック野郎」という設定に変わっているが(その必然的状況設定は乏しい)、最近のシェイクスピア・シアターの道化役は木村美保の定番になったようだ。
 パックを演じた中島留美は、この役には力量不足を感じた。
 最近はシェイクスピア・シアターの上演にはいつもフラストレーションを感じるので、今回はやめにしようかと思ったが、一つだけでもと思ってこの『夏の夜の夢』を選んだが失敗だった(もう一つの演目は『じゃじゃ馬馴らし』)。
 出演は、シーシュース公爵とオーベロンに平澤智之、ヒポリタとタイテーニアに槇由紀子、イージアス、フィロストレイト、クィンスの3役に高山健太、ハーミアに住川佳寿子、ヘレナに佐々木暁子、ボトムに木村美保、他。
 シェイクスピア・シアターの公演ではよくお会いする小田島雄志先生が今回も同じ日に観劇されていた。
上演時間は、休憩なしで2時間。

小田島雄志訳、出口典雄演出
5月1日(木)18時30分開演、俳優座劇場、チケット:3500円、座席:9列11番 


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