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  LABO 公演 No. 13 『十二夜』      No. 2008-006
 

舞台壁面は海中をイメージさせる模様。

時に、舞台奥壁面の下手の下方に、大きな満月が浮かぶ。

登場人物は、その頭上に海の生物の帽子をつけている。公爵は緑色の珊瑚、ヴァイオラは紅色の珊瑚、サー・トービーは蛸、アンドルーは烏賊、道化はヒトデ、マルボーリオやマライア、フェビアンは巻貝、オリビアは鮮やかなサファイア色の貝をそれぞれ頭に着けている。

見ようによっては、この物語は竜宮城の夢物語。

今回の上演に当たって、演出から美術、構成すべてを手がける堀内仁が、新たに大胆な翻訳をしている。

トービーとアンドルーの二人には思い切り関西弁を使わせている。そのため二人の会話はボケとツッコミの漫才のような台詞になっている。

休憩なしの2時間5分という上演時間で、全体的にもスピード感のあるメリハリのきいた構成になっている。

前半の出足の部分では、公爵(甲斐智堯)の台詞、ヴァイオラ(真胡珠央)の台詞がくぐもったような不明瞭な声で聞き取りにくかったことと、続いて登場してきたトービー(平川和宏)とアンドルー(川本立樹)の関西弁の会話が唐突で違和感があり、舞台全体も覚めた感じがして席を立って帰ってしまいたくなるような気持であった。

ところが、オリビアが自分に恋しているとひとり夢想にふけるマルボーリオ(稲葉真)の独り相撲と、マライア(稲葉浩美)がオリビアに似せて書いた手紙を拾って読む場面は、稲葉真の絶妙な百面相的表情と目の動き、その仕草が見せ場となって、舞台を一挙に高揚させ盛り上がる。

トービーとアンドルーの関西弁もエンジンが暖まったように当初の違和感も飛んでなじんできたばかりでなく、トービーの平川和宏が俄然舞台の盛り上がりを高めるようになる。

この舞台のオリジナルの挿入歌と踊りがいっそう舞台全体の効果を盛り上げ、うきうきとした楽しい気分にさせてくれる。

ヴァイオラを演じる真胡珠央は、最初の登場では本物の女性と見間違えたほどであったが、双子の兄セバスチャンの二役で、そのセバスチャンを演じるときの声と動きの切り替えは見事であった。

最後にはこの双子の兄妹が同じ舞台に登場しなければならないのであるが、それは舞台奥にあるカーテンで仕切られた中央の扉の影に彼(彼女)が隠れて、その両脇に半円形の鏡を立て、セバスチャンの台詞では右手にその姿を映し出し、ヴァイオラの台詞では左手に映し出すという工夫をしている。

オリビアを演じる桜内結うは、澄んだ気品のある瞳が豊かな表情を表現して、可憐な愛らしさを感じた。

小柄な道化の滝川真澄もチャーミングな茶目っ気で、この舞台によく調和したキャステイングだと思った。

宮廷音楽師モーツアルトとしてバックでピアノを弾いて歌う華麗なDarieも舞台に花を添える。

出足こそ、この日の雨が象徴するかのような不満足な気持と不安を持たせたが、終わってみればこれほど素晴らしい舞台はないという満足な気持で雨の中を帰って行くことができた。

そういえば、最後の道化の歌、「ヘイ、ホウ、風吹き、雨が降る」はなく、かわりに楽しい歌と踊りで終わりを締めるが、その歌と踊りの最中に、結婚で結ばれた三組の女性、マライア、オリビア、ヴァイオラがそれぞれめでたく懐妊して大きなおなかを抱えて登場してきて、ハッピーエンドにさらに和みを添え、この日の雨の鬱陶しさを吹き飛ばしてくれた。

 

(翻訳・構成・美術・演出/堀内仁、4月10日(木)、theatre iwato にて観劇)


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