今回の舞台は始めから少し精彩を欠いていた。
地方判事シャロー(今井良春)、シャローの従弟スレンダー(山口勝久)、神父のヒュー・エヴァンズ(神山寛)が登場する最初の場面では、今井良春の台詞もどこか訥々としており、神山の声にも張りがなかった。
今回の出演者の半数以上が客演参加であるが、それがプラスに働くというより、全体の融合性に欠けて、ちぐはぐな印象であった。
そのためか、舞台にすっと入っていけないもどかしさがあった。
特に前半部の一幕は舞台が硬直した感じで、盛り上がりがなく、平板であった。
全体的に役の台詞が入っていなかった。
案の定、プロンプターの声が入ってきて、ときに耳障りであった。
ガーター館の亭主を演じる依田英助は特に台詞が入っていなかった。
しかし、それがボケとツッコミのような、苦みのあるおかしみを感じさせたのは皮肉であった。
ページを演じる三口剛太朗はひときわ目立つ長身で、僧侶のような長い衣装に、キリストのような長髪で、ウィンザーの市民という外貌にはふさわしからぬ印象で、とても違和感を覚えた。
嫉妬の妄想にかられるフォードを演じる鈴木吉行の台詞が一番通っていたが、その熱演も全体の雰囲気のなかではむしろ浮いた感じであった。
期待の遠藤栄蔵のフォルスタッフも周りの空気と和合せず、台詞回しも輝きを感じなかった。
昨年の『ヘンリー四世』二部作一挙上演で、引き続き遠藤栄蔵のフォルスタッフを『ウィンザーの陽気な女房たち』でもう一度観たいと思ったのだが、これではフォルスタッフの再登場を望んだエリザベス女王もがっかり・・・。
演出全体についても平板で、客席の空気も冷めており、最後まで盛り上がりに欠けたのは残念であった。
訳/小田島雄志、演出/遠藤栄蔵
3月22日(土)16時開演、板橋区立文化会館・小ホール、チケット:3000円、座席:H列13番
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