観劇日記 あーでんの森散歩道 高木登
 
  劇団タイプスプレゼンツNo. 27公演 『間違いの喜劇』       No.2008-004

『ツィンズ・タウン!!』 ― 海に浮かんだ月 ―

 一粒で三つの味を楽しむことができる。
 まず、題名がなんともファンタステイック!!「海辺に浮かんだ月」というのがメルヘン調で想像力を煽る。
 そして歌と踊りありのミュージカルで、軽妙、軽やかな気分になれる。
 最後に、双子の兄弟ドローミオを演じる富岡香織と小島典子の道化役が、舞台を楽しく愉快にしてくれる。
ツインズ・タウンというと、なにかツインタワーか、二つの姉妹都市のような響きを感じるのだけれど、おそらくここでは、双子の兄弟の町、を意図しているのだろうと思う。
 しかし登場人物はエフェサスとシラキュースという二つの都市に関係しているので、想像がこの二つの都市のことに走ってしまう。
 海辺に浮かんだ月は、この犬猿の仲の二つの都市を結びつける役割があるような想像に掻き立てられる。
 そんなメルヘンチックな感じのタイトルだけど、始まりは深刻。
 シラキュースの商人イージオン(立石幸博)が対立するエフェサスの町に不法に入ったために死刑の宣告を受ける。この場面、エフェサスの公爵(古谷佳也)は片足を戦争で失ったという設定で、その身なり風貌は海賊船の船長のようであった。その異様な雰囲気と、処刑の宣告はパブリックな行為であるのに、この場面、イージオンと公爵の二人だけというのは自分には異質な感じがして気になったのだが・・・・。
 その暗い、陰鬱な場面から一転、兄を捜し求めてきたアンテイフォラス弟(栗原彰文)とドローミオ弟(小島典子)がエフェサスに上陸した場面に転じて、舞台は一挙に明るくなっていく。
 出迎える商人二人、一人はギターをかかえ、サングラスをかけており、ポン引きまがいのようにアンテイフォラスに誘いをかける。もう一人の商人はヌーボーとして、この二人の関係は漫才のボケとツッコミのような関係に見える。
 サングラスの商人の話ではないが、この後舞台は、エフェサスの花魁チームが登場し、歌と踊りで華やぐ。
 後はおなじみのドローミオ兄弟の取り違えによる勘違い、すれ違いの喜劇。
 二人のドローミオの軽妙な演技を楽しむことができる。
 最後の、ドローミオ兄弟が肩を並べて引っ込んでいく場面では、舞台に大きな月を浮かべたらどうだったろう・・・。
 シェイクスピアの劇を観ているとき、ついいろんなことを思い浮かべたりする。
 エドリエーナが、アンテイフォラス(兄)に口やかましく嫉妬の言葉を浴びせたことを修道女院長のエミリアに告白する場面を見ていて、シェイクスピアの8歳年上の妻、アン・ハザウエイのことを思ってしまった。
 シェイクスピアも小うるさい年上女房のがみがみ言葉から逃げ出したのではないかと・・・。 
 今回、演出のぱく・ぱんいるが台本とあわせて劇中の歌詞の作詞もしている。
 それに、名前をこれまでのカタカナのパク・パンイルからひらがなに変えているのは、何かを意識してのことだろうか?・・・変革!?・・・・
 これから先がちょっと気になって、楽しみな・・・。


翻訳/小田島雄志、作・編曲/山下大輔、台本・作詞・演出/パク・パンイル
2月23日(土)14時開演、シアター代官山、チケット:3500円、座席:F列10番


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