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  2NKプロジェクト公演 『ハムレット』      No. 2007-024
 

2NKプロジェクトの公演を見るのは今回が初めてであるが、『二人のいとこ貴公子』の本邦初公演や、『じゃじゃ馬馴らし』と『じゃじゃ馬馴らしが馴らされて』の日本初の同時公演など、これまでのユニークな活動内容から、一度その舞台を見たいと願っていた。

この『ハムレット』公演に当たっては、セリフの追求のために、昨年、ステージド・リーデイングなるものを実施して、2年がかりで取り組んできたという前宣伝にも関心があった。

そして、この舞台を演出する佐藤里恵が、アーデン・シェイクスピア最新版『ハムレット』編者のアン・トンプソン教授の指導を受け、それを自らの翻訳での演出ということにも非常に興味をそそられた。

また2NKのホームページの公演内容のお知らせには、ほとんど何もない舞台に「鏡」が置かれ、後半になってハムレットとレアテイーズが入れ替わることも紹介されていた。手品の種明かしを先に明かされているような気がしないでもなかったが、そのことにも強く興味が引かれた。

期待度が高いとその反動が大きいこともよくあることで、その点ではこの2NKプロジェクトの『ハムレット』もそれを免れなかった訳ではないが、個々の不満は多少あっても全体としては興味と関心を満足させてくれるものであった。

全体の印象から言えば、2年がかりでセリフに取り組んできただけあって、個々のセリフは非常に磨きがかかっていたように感じた。

幕開けは漆黒の状態で、何も見えない。歩哨に立っていたフランシスコとバーナードの互いに相手を誰何する声と、その二人が取っ組み合っている音のみが聞こえる。舞台がやっと明るくなって、二人が手にしている武器が剣や槍でなく、拳銃であった。これには違和感があった。

前半のハムレットを演じる山崎康一(Studio Life所属)は、情念に燃えているようなセリフ。彼は、後半、父ポローニアスを殺されたレアテイーズを演じることになるが、復讐の情念に燃える姿は前半のハムレットに重なる。

彼がハムレットからレアテイーズへと変じるのは、第4幕第4場、ハムレットがフォーテインブラスの軍隊を見送った後の独白のシーンの後である。彼は「鏡」に向かって独白し、その鏡の後ろへと引き下がり、アテイーズを演じていた大沢一起が鏡の後ろから出てきてハムレットとして入れ替わり、そこで幕間となる。

山崎康一が演じるハムレットが燃え盛る炎の情念とすれば、大沢一起のハムレットは青白く内燃する秘めた炎。

ハムレットとレアテイーズを入れ替える演出の意図、‘「報復の鎖」と「赦しの心」 ― 復讐するものが、されるものに・・・’、とチラシには説明されているが、山崎康一の演技力がむしろ能弁に語っていると思う。

藤川一歩(劇団1980所属)が演じるクローデイアスにも、セリフと目の動かし方に凄さを感じた。

以倉里江子もこれまでのオフイーリアにはないものを感じさせたが、狂気の状態でのセリフが一部はっきりしないところが気になった。

フランシスコ、ヴォルテイマンド、劇中劇の王妃、墓掘りなど八面六臂の役を演じる栗原康子もからっとした濃艶な色気を出しながら舞台を和ませ、楽しませてくれた。

翻訳で気になったところがある。

ハムレットがオフイーリアに向かって言う、普通は「尼寺へ行け」と訳されるところを「修道院へ行け」と訳している。セリフの音の響きとしてもあまりいいとは思えないのだが、あえてそう訳したのはなぜか。「尼寺へ行け」では手垢に染まった訳と思われたのだろうか?一度全体を通しての訳を読んでみたいと思う。

途中10分間の休憩を挟んで約3時間40分の上演。

(翻訳・演出/佐藤里恵、制作/2NKプロジェクト、9月30日(日)、シアターXにて観劇)


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