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  劇団AUN第14回公演 『じゃじゃ馬ならし』      No. 2007-021
 

間宮啓行の演出の奇抜さ、谷田歩のペトルーチオは、文句なく面白かったし、劇団AUNのパワーとエネルギーを存分に感じさせる舞台であった。

当日配布されたチラシを見たとき、鋳掛け屋スライのキャステイングが見受けられなかったので、最初は少しがっかりした。序幕の、鋳掛け屋スライの場面はよくカットされて上演されることが多いのだが、この場面を入れた演出では結構奇抜なものがあってそこを楽しみにもしていたからだった。

しかし、間宮啓行の演出はそんな失望感を吹き飛ばしてくれた。

場面は、ナント、キャタリーナ(森本佳代子)の結婚式の場面から始まる。ただし花婿はペトルーチオではなく、まったく別の人間。夫となるべき人物は、牧師の「汝はこのものを妻とするか」という結婚式の宣誓に対して、「しません」と言って逃げ出してしまい、一同がそろって彼を追いかけて退場と言う騒動が序幕の代わりとなる。

第1幕、パデユアの場面は、添乗員(松本光生)が主婦連を連れての賑やかなツアーで始まる。ルーセンショー(長谷川祐之)とトラーニオ(長谷川耕)の主従は、そんな花の都のパデユアにやってきて、バプテイスタ(星和利)の娘ビアンカ(根岸つかさ)に一目ぼれ。

キャタリーナの求婚者のペトルーチオ(谷田歩)の登場は、ホリゾントのパネル式スライドドアから、カーボーイハットに、ロングの黒いコートを羽織ったジーパン姿で、軽快な音楽に乗ってさっそうと登場。森本佳代子のキャタリーナと谷田歩のペトルーチオの台詞の応酬は見ていて、聞いていて痛快そのものであった。

ペトルーチオの、キャタリーナとの結婚式の当日の衣裳が意表をつく。ペトルーチオの服装は、ボデイフイットの赤色のウエットスーツのような衣裳。お供のグルーミオ(本田菊次朗)は反対に真っ白の同様な衣裳。

ペトルーチオの屋敷を守っている従僕、カーテイス(松木良方)とグルーミオの二人の会話も、大阪での世界陸上大会などの時事問題などのアドリブや、松木良方がグルーミオの会話をそらすようにしていて聞いていながらも、まともに応えるとぼけたところなど、楽しませてくれる。

ルーセンショーの父親ヴィセンショー(木村健吾)は、3人の看護婦に付き添われて車椅子で登場。ペトルーチオがキャタリーナにそのヴィセンショーを「美しいお嬢さん」と呼ばせるとき、3人の看護婦が自分たちのことだと思って思わずポーズをとるのも、お遊びの面白さがあった。

ヴィセンショーが手振りで看護婦に合図すると、看護婦がヴィセンショーの口に聴診器をあてて、ヴィセンショーにかわってしゃべるので、彼は口が聞けないのかと思っていると、息子のルーセンショーに変装したトラーニオと出会ったときに、怒りに燃えて声も出せば、車椅子から立って歩きもするのだった。

キャタリーナがビアンカと未亡人に貞節な妻のあり方を順々と説得する場面では、主婦連の一人(林蘭)やグレミオが「そこまで言うか」と声を挟もうとするが止められる。キャタリーナの説得がなんの障害もなく語られてしまえば、出来すぎで、嘘っぽくなるのだが、このように途中で異議の声が入ると説得力も増す。

が、最後の最後にキャタリーナのつぶやく声に、彼女を抱きしめているペトルーチオは将来の逆転を感じるかのように「?」の顔をする。そしてすぐに暗転。この思わせぶりの終わりが、余韻を残して効果的だった。

テンポもよく、休憩なしの2時間10分の上演時間があっという間に過ぎた。

 

(訳/小田島雄志、演出/間宮啓行、9月8日(土)、高円寺の明石スタジオにて観劇)


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