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  シェイクスピア・シアター公演 『ヴェローナーの二紳士』      No. 2007-012

〜 「恋」と「友情」と「裏切り」のテーマ、漱石の『心』を脚色して同時上演 〜

2004年の夏公演(6月)以来の再演。
前回プロテユースの恋人ジュリア演じた島小百合が退団して今回は住川佳寿子が演じ、そのプロテユース役を前回演じた、シェイクスピア・シアターの中心的存在の一人でもあった松本洋平もどうやら退団したようで、今回同じ役で出演しているが、「シェイクスピア通信」には客演として紹介されていた。そのほかのキャストもミラノ大公を演じる客演の松木良方と、主役のヴァレンタインを演じる平澤智之を除けば大幅に入れ替わっている。ヴァレンタインの恋人シルヴィアは甲斐田裕子から客演の松岡依都美となっていて、退団によるメンバーの変動には一抹の淋しさを感じた。反面、思いもかけないような新人(?)が入っていて、かなりの年配者と見受けられる華山益夫さんがプロテユースの父親アントーニオ役と楽師を演じていて、なかでも楽師の役でシルヴィアに歌を歌って聞かせる場面など、その歌のうまさに意外な感じさえした。

出口典雄による小田島雄志訳のシェイクスピア演出は明快で、台詞の面白さを十分に楽しませてくれる。シンプルで明解な演出が、この作品の内容の矛盾や混乱、そして「友情と裏切り」と「和解」の不自然さを際立せる。ヴァレンタインが自分を裏切ったロテユースをいとも簡単に許すのはどうみても不自然なのだ。この劇の終わり方はどこか尻切れトンボのような、不消化な気持を抱かせる。

『ヴェローナーの二紳士』とあわせて出口典雄が夏目漱石の『心』を脚色した『こころ』を同時上演する。その試みの意図が、劇を観ている最中に忽然と明瞭に見えてきた。― 「恋」ゆえに「友情」を裏切るというテーマの対比。

『こころ』では久しぶりに吉沢希梨も客演として出演することになっているので、『ヴェローナーの二紳士』との比較とあわせて楽しみ。

(翻訳/小田島雄志、演出/出口典雄、6月4日(月)俳優座劇場にて観劇)

 

『こころ』

第1幕では、「私」を平澤智之、「先生」を客演の得丸伸二を演じ、第2幕では学生時代の「先生」を平澤、友人の「K」を得丸が演じる。得丸伸二の「先生」は漱石を髣髴させる。

先生の奥さんを演じる佳川佳寿子が、シェイクスピア劇とは違った、静かで落ち着いた風格を感じて好ましく思った。奥さんの母親、未亡人を客演の吉沢希梨。この人がシェイクスピア・シアターに登場するだけで、舞台が引き締まるような感じがする。シェイクスピア・シアターの杉村春子といった存在感。

『ヴェローナーの二紳士』に続いて『こころ』でも松木良方が「私」の父親役と「先生」の「叔父」役で出演。

6人の朗読者が「地」の文を朗読するのは、「コーラス」のような効果を感じさせた。

途中休憩をはさんで2時間30分の上演。

 

(原作/夏目漱石、脚本・演出/出口典雄、6月8日(金)俳優座劇場にて観劇)

 

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