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  ASC第34回公演『オセロ』     No. 2007-011
 

“4人の俳優で四大悲劇を”シリーズ決定版 + 新人チームによる公演

4人の俳優で演じるシェイクスピアの四大悲劇は、2002年秋の『オセロ』の公演に始まり、その後2003年『ハムレット』、2004年『リア王』、2005年『マクベス』で一応完結された。

今回の『オセロ』はその決定版として新演出で彩乃木崇之が臨んでいる。第1回目とのキャストの違いは、エミリア、ロダリーゴなどを演じた新人の音室亜冊弓から、劇団創立メンバーの一人鈴木麻矢に変わった以外は同じである。すなわち、オセロ/他に菊地一浩、イアーゴ/他に彩乃木崇之、デズデモーナ/他に那智ゆかりが前回同様のキャストである。

初演の演出では、そのコンセプトを「純粋さ」ゆえに傷つく悲劇とし、「音」を重要な表現手段としてウッドベースの生演奏で男の残酷性を表し、那智ゆかりのヴォーカルで女の悲劇性を表象した。

今回の演出では、彩乃木崇之は嘘の排除と単純化に注意を払ったことを強調している。その表現手段としては、「何もない空間」で極力動かない演技を目指している。ということは必然的に、すべてが俳優の台詞力にかかってくることを意味する。一人の俳優が何人もの人物を演じる、そこにその人物の内面までをいかに表出するか、俳優の実力が問われる。そこはベテランの演技人、多様な人物をうまく演じ分けている。このところ出演が遠のいていた鈴木麻矢の、ロダリーゴ、エミリア、ビアンカなどの演技(台詞)を久しぶりに楽しませてもらった。

今回この舞台のために飯田彰子さんが新たに作曲した劇中歌「柳の歌」を歌う那智ゆかりのヴォーカルもハイライトではあるが、英語の‘willow’と日本語の「柳」の音感に違いを感じた。英語の‘willow’はもっと切ない気がする。

チラシによると、今回のこの4人のメンバーによる共演は実に7年ぶりだという。その期間を感じさせない息のあった共演であった。

一方、創立11周年を迎えたASCは、その「抜本的改革」のために新人の育成強化をはかる目的で『オセロ』の新人公演も組んでおり、その上演も同じ日の夜の部で観劇した。ASCの新人以外に、藤田三三三がイアーゴ役で客演し、外部からは増留俊樹さんが「布告」役でASCに初登場している。

ロダリーゴ役を演じることになっていた野口真由子さんが体調不調ということで降板し、かわって彩乃木崇之が演じた。昼の部で「4人の俳優」の彼のイアーゴを見ていたので、藤田三三三と彼の二人のイアーゴがだぶって見えてしまうことがあった。新人チームの中にベテランの客演が入ると舞台も引き締まっているように思われる。

新人チームの中では、日野聡子さんのデズデモーナは台詞もよく出来ているし、演技も清新な感じで、「柳の歌」のヴォーカルも那智ゆかりさんとは違った情感があって、よかったと思います。

オセロを演じた徳丸恵一君は、新人チームの中では体形からしてもオセロは彼だろうと納得できるキャステイングだが、台詞がすこし力み過ぎているようでした。しかし、そこは彼のシェイクスピアへの取り組みの一途さを買いましょう。

勝木雅子さんのエミリアはかわいくてチャーミングな印象で違った意味で新鮮味を感じました。

劇団のホームページに紹介された新人のプロフィールを見ると、その年齢構成と経歴も多様で、今後の彼らが活躍する公演も楽しみである。その新人の一人、ビアンカを演じた大西伸子さんは別の才能を発揮して、劇団代表の彩乃木崇之さんの勧めで脚本を書き上げ、ASCの若手による公演を9月に予定しており、すでにその活躍の場を広げていっている。

(翻訳/小田島雄志、演出/彩乃木崇之、銀座みゆき館劇場にて、6月2日(土)昼と夜の部を観劇)

 

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