~ 衝撃的、かつ迫力満点で、夢の世界に ~
衝撃的というか、度肝を抜くような始まり。
開幕の合図もなく、いきなり観客席後方からけたたましい嬌声。そして脱兎のごとく舞台へと疾走の足音。
一人の男の兵士(兵隊服を着ている)が3人の女性兵士から襲われている。一人は中央で槍を振るい、両脇の他の二人は一人がフルート、もう一人がヴァイオリンを持っており、その楽器を奏でることが武器を振るっていることを表象している。
そこで女たちがアマゾンの女兵士たちであることが氷解する。槍を振るっているのはヒポリタ。男の兵士を翻弄していた彼女であるが、シーシスウスに降伏させられ、結婚を強いられる。
一昨年、グレゴリー・ドーラン演出によるRSCの『夏の夜の夢』を観たとき、ピーター・ブルック以来の快挙と感心したが、今回冒頭からこのような電撃的衝撃を受けるとは思いもよらなかった。もうこれ以上のものはないのではないかと思っても、可能性は無限にあるものだと感じ入った。
ITCL(International Theatre Company London)の公演は男優3名、女優3名のわずか6名による演技であるが、登場人物の早変わり(衣裳も当然変わっている)によってスピード感にあふれている。この人数の制約によって演出の工夫が随所に見られ、それだけでも見所として楽しめる。キャストを参考までにあげてみると、
シーシウスとオーベロン、そしてアテネの職人を、Richard Clodfelter
ヒポリタとタイテーニアを、Natalia Cambell
デミートリアスとボトムを、Richard Ede
ライサンダーとパックとスナッグを、Gareth Radcliffe
ヘレナとイージアス、そしてヴァイオリンを奏でる妖精に、Ali Kemp
ハーミアとフルート、そしてインドの少年に、Kate Rawson
この6人の表情豊かな演技を見るだけでも楽しい。誰もすばらしい演技であったが、なかでもハーミアを演じたケイト・ローソンはパワーにあふれ、圧倒される演技であった。
舞台には装置らしいものはほとんどなく、小道具で幻想的な世界を作り出している。なかでも美しいと思ったのは、シャボン玉を飛ばすシーン。夢の世界に入っていくようであった。
理屈を抜きにして楽しむことが出来た。
上演時間は途中15運間の休憩をはさんで2時間40分。
前列から2番目(といっても1列目には誰も座っていないので実質最前列)、舞台中央の席で観劇。舞台を見上げるような感じではあったが、間近に見ることができて、迫力満点であった。
脚色・演出/ポール・ステッビングズ
5月31日(木)17時開演、東京女子大学講堂、チケット:1000円
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