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自分が見たシェイクスピア関連劇は年間にして30本余りでしかなく、その限られた範囲の中で、見た劇も多分に自分の嗜好の範囲内に限定されているため、その選択は独断と偏見は免れないが、元々が自分のための観劇記録のためのものなので、その選定はご愛嬌のつもりで容赦してもらえればと願っています。
前置きはこのくらいにして、今年は特別に飛びぬけた強烈なものはなかったけれども、総合的には興味ある内容が多かったと思う。
で、まずそのベスト5からあげると、 |
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1)『コリオレイナス』 (彩の国さいたま芸術劇場) 蜷川幸雄演出 (2月) |
蜷川幸雄の常套手段ともいえる舞台装置に階段と鏡を使い、その階段上部に屹立する四天王像が印象的であった。 |
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2)ITCL公演『夏の夜の夢』 ポール・ステッピングス演出 (4月) |
ほとんど何もない舞台空間に、わずか6人で演じる、はじけるような演技に圧倒された。 |
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3)子供のためのシェイクスピア『夏の夜の夢』 山崎清介演出 (7月) |
とにかく楽しい舞台。ボトムが歌う歌は「千の風になって」の吹き替えが、今様の遊び。 |
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4)劇団AUN『じゃじゃ馬馴らし』 間宮啓行演出 (9月) |
このところ自らの出演が多くて主宰する劇団AUNの演出をする間もない吉田鋼太郎に代わって間宮啓行が初演出。間宮啓行に特別演出賞を出してやりたい。 |
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5)りゅうとぴあ能楽シェイクスピア『ハムレット』 栗田芳宏演出 (12月) |
2月に同じく栗田芳宏が演出した上演したメジャーリーグ版『ハムレット』と対で対象にしたい。栗田芳宏の変容する演出がみもの。
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<特別賞>として、
★ 楽劇歌劇『真夏の夜の夢』 流山児祥演出 (5月)
演劇で遊ぶ地域密着型の大人のための演劇ワークショップ劇団、平均年齢55歳の“昔の”少女軍団、「楽劇」が創立10周年を記念して下北沢の本多劇場で、野田版シェイクスピアに挑戦。
最高年齢は65歳という年齢に関係なく、ナントかわゆい演技。
ときたまご(=ハーミア)を演じた小森昌子オバサマのセリフや仕草は、そこにいるだけでカワユイ存在。
白い衣裳のパック(川本かず子)と黒い衣裳のメフイストフェレス(桐原三枝)の対称的な衣裳がとても印象的であった(もちろん、衣裳だけでなく演技も含めて)。 |
<蜷川幸雄と栗田芳宏>
今年、その演出の質量において、この二人の存在が圧倒的であった、と思う。
蜷川幸雄は、シェイクスピア上演の軸足である彩の国さいたま芸術劇場では、今年は3作を上演。
2月に『コリオレイナス』(唐沢寿明主演)、なおこの作品は4月にロンドンのバービカン劇場でも上演された。4月には“男優のみによる”『恋の骨折り損』、そして10月に『オセロ』(吉田鋼太郎主演)。
05年に初演された『NINAGAWA 十二夜』が7月に歌舞伎座で、04年に彩の国さいたま芸術劇場で初演した『お気に召すまま』がシアターコクーンで再演された(この再演2本については見ていない)。
一方、栗田芳宏は、2月に安寿ミラの『ハムレット』(メジャーリーグ制作)の再再演、4月にりゅーとぴあ能楽堂シェイクスピア・シリーズ公演で、市川右近主演の『マクベス』再演、12月に同じくりゅーとぴあ能楽堂シェイクスピア・シリーズで河内大和主演の『ハムレット』を上演。それは、再演であっても新しい『ハムレット』であり、『マクベス』であって、決して同じものの繰り返しでない。その変容を見るだけでも興味が尽きないものであった。
<今年も盛んであった『ハムレット』、『夏の夜の夢』の上演>
これは僕が直接観た上演だけの数であるが、『ハムレット』が4本、『夏の夜の夢』が5本である。
僕が今年観たシェイクスピア劇が全部で34本だから、この2本で全体の4分の1を超える。
『ハムレット』は、
1. |
タイプス公演、パク・パンイル演出、新本一馬のハムレット (2月、俳優座劇場) |
2. |
メジャーリーグ公演、栗田芳宏演出、安寿ミラのハムレット (2月、サンシャイン劇場) |
3. |
2NKプロジェクト公演、佐藤里恵演出、山崎康一と大沢一起がハムレットとレアテイーズを前半と後半で役を入れ替わる (9月、シアターX) |
4. |
りゅーとぴあ公演、栗田芳宏演出、河内大和のハムレット (12月、表参道の銕仙会能楽研修所) |
『夏の夜の夢』は、
1. |
楽劇創立10周年記念公演、流山児祥演出、野田版『真夏の夜の夢』 (5月、下北沢の本多劇場) |
2. |
ITCL公演、ポールステッピングズ演出 A Midsummer Night’s Dream (5月、 東京女子大学講堂) |
3. |
ジョン・ケアード演出、村井国夫、麻美れい出演 (6月、新国立劇場・中劇場) |
4. |
子供のためのシェイクスピア公演、 山崎清介演出 (7月、東京グローブ座) |
5. |
OUDS来日公演、サラ・ブランスウエイト演出 (8月、東京芸術劇場・小ホール2) |
<シェイクスピア劇専門の劇団の活躍>
◆板橋演劇センター
地域に密着した劇団、1980年に『夏の夜の夢』から始まってこれまでシェイクスピア19作品を上演。
今年6月に初めて英国史劇、『ヘンリー四世・第一部』と『ヘンリー四世・第二部』を一挙に同時公演の快挙。
豊島区のその他の地域劇団の主力メンバーも加わっての、それこそ地域総ぐるみでの取り組み。
劇団代表者でもあり演出者でもある遠藤栄蔵がフォルスタッフを力演。
来年3月にも遠藤氏は、『ウインザーの陽気な女房たち』で引き続いてフォルスタッフに挑戦する。
◆東京シェイクスピア・カンパニー(TSC)
TSCのシェイクスピア劇は、シェイクスピアそのものではなく、たとえばその後のマクベスであり、その後のリチャード三世であり、10年後のシャイロックを描き出す、少し特異な方向性をもっている。シェイクスピアのオリジナルをどのようにひねっているかを見る楽しみがある。
今年は、『から騒ぎ』を3月に江戸馨脚本で、『だまし・だまされ・から騒ぎ』に翻案し、10月には奥泉光脚本による『恋のむだ骨』を上演。
来年(7月)には、『ヘンリー六世』三部作を牧野くみこ主演で『王妃マーガレット』として取り組む。
◆アカデミイック・シェイクスピア・カンパニー(ASC)
劇団創立10周年を昨年迎え、今年は11年目としての新たな出発を目指している。
6月の『オセロ』までは銀座みゆき館劇場を足場にしてきたが、11月には川崎ファクトリーにその拠点を移して『タイタス・アンドロニカス』を上演。
近年のASCの特色の一つに、1つの作品を2つのバージョンで同時公演(競演)することをあげることができると思う。たとえば、四大悲劇を4人の俳優で演じるシリーズとそれを新人公演チーム(オーデイションで公募)で演じる競演がこの数年続けられてきた。今年の『オセロ』もそのような形態で上演され、僕はその両方を観た。
『タイタス・アンドロニカス』では、「男優限定チーム」と「男女混成チーム」の競演であった。そのうちの男女混成チーム版を観劇した。
◆劇団AUN
劇団代表の吉田鋼太郎が外部出演(大半が蜷川幸雄の演出)で多忙を極め、劇団員の主要メンバーも外部出演が多くなってきた。
多忙な吉田鋼太郎が、4月21日(土)に早稲田大学文学部キャンパス(36号館382教室)で、AUNの劇団員が参加してのワークショップを行った。
7月30日(月)と31日(火)の二夜限りの『夏の夜の夢』を急遽、サンケイビル地下1階ガーデンで上演。これは残念ながら予定が立たず見られなかった。
9月に本公演を間宮啓行初演出で『じゃじゃ馬馴らし』を高円寺の明石スタジオで上演した。
◆タイプス
劇団代表の新本一馬は、文学座研修所や出口典雄のシェイクスピア・シアターを経て、1999年にオフイス・タイプスを設立。シェイクスピアをはじめ古典劇を上演。
シェイクスピア劇は、韓国のパク・パンイルが演出しているのが異色である。
今年はじめてこの劇団のシェイクスピア劇を観る機会を得た。
シェイクスピア・シアター時代に見たことがある斉藤芳や小島典子が活躍していて懐かしく感じた。
今回見た作品は、『ハムレット』(2月)、『マクベス』(3月)、『ロミオとジュリエット』(5月)の2本で、いずれも俳優座劇場にて。
日程の都合で見られなかったが、12月15日(土)、光が丘IMAホールで1日限りの『マクベス』が上演された。この公演には、かつてシェイクスピア・シアターの仲間でもあった劇団AUNの谷田歩、中井出健なども参加しており、見逃したのは惜しい気がした。
◆シェイクスピア・シアター
6月の公演では、『ヴェローナーの二紳士』、11月の公演では、『ペリクルーズ』、『間違いの喜劇』、『冬物語』の2本を上演。そのうち『間違いの喜劇』を除いて全部を見た。
6月の公演を最後に、松本洋平が退団。メンバーがなんとなくやせ細っていく感じだが、11月の公演では、これまでのOBの参加以外に、文学座や演劇集団円からの特別出演があり、舞台に活況を添えた。
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