残念ながら非常につまらない舞台であった。退屈で眠ってしまうほどであった。大半の観客が寝ていたように見えた。台詞も棒読みに近く、むやみに大声を出してみたりしていて、感情がまったく伝わってこない。台詞をしゃべっている人物以外は、まったく無感覚な表情をしている。
たとえば、マクベスの祝宴の場、マクベスがバンクォーの亡霊におびえながら語りかける場面では、マクベス(平澤智之)以外、宴席に座っている者はまったく無表情で、まるで舞台とは無関係にその場にいるような感じしか受けなかった。
平澤智之のマクベスも、島小百合のマクベス夫人も、今回はがっかりさせられた。
シェイクスピア・シアターのマクベス夫人といえば、吉沢希梨を思い出さざるを得ない。島小百合と比較する方が酷であるかも知れない。
演出にも不満が残った。最初に登場してくる3人の魔女たちからしてそうであったが、うずくまって顔を床に伏せて台詞をしゃべる。今回、おおかたの台詞がそのように語られていて舞台全体が卑小に感じられた。
『から騒ぎ』でヒーローの侍女マーガレットを演じた木村美保が、この『マクベス』では門番や暗殺者など演じていたのが、不満足な中にもまだ見る(聴く)べきものがあったのが少しの救いであった。
全体の不満足のなかにあって、松木良方の渋いうまさが余計に光って見えた。今回一緒に観た娘の七保の感想も「つまんない」の一言であったが、松木良方だけはうまかったと言っている。
訳/小田島雄志、演出/出口典雄
6月10日(土)14時開演、俳優座劇場、チケット:3500円、座席:5列5番
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