流山児祥翻案による『楽塾版☆十二夜』は、あらためてシェイクスピアがこんなにも面白いものだということを体感させてくれる。
「楽塾」は、9年前に流山児祥が同時代の人たちと「演劇で遊ぼう」という呼びかけで集まった5人のフツーのおじさんとおばさんで旗揚げされ、それが今では総勢15人の劇団にまで成長し、この9年間で13本の作品を上演してきたという。最初はおじさんとおばさんで旗揚げされたということであるが、現在の団員は女性ばかりで、しかも平均年齢が53歳という。
『楽塾版☆十二夜』は、日本の時代劇に翻案して、場所は紀の本の国、登場人物もヴァイオラを雪姫、セバスチャンは雪之丞、オリヴィアは時姫というように名前も変えられている。道化役は、ヤン坊、ニン坊、トン坊という名前で3人が演じる。
舞台は歌あり、踊りありで、ハイテンポで展開していく。
歌は役者の平均年齢にふさわしい時代(?)の歌謡曲(演歌)が中心で、同世代の僕にとってはその曲目だけでも感傷的な嬉しさを覚えた。
上演時間は1時間半と凝縮されているが、シェイクスピアの原作のエッセンスはすべて残されている。そのため1時間半の上演時間が2時間以上のものに感じられ、内容の濃いものとなっている。
この芝居を観て感じたことは、この劇団(?)が結成された当初の基本方針である「演劇で遊ぼう」ということが十二分に発揮されているということである。それが観ている観客の僕らの肌に伝わってくるのが素晴らしい。
リーフレットの「ごあいさつ」を読むと、この上演に当たっての稽古には10か月をもかけたとあり、それだけにじっくり味わうべきものがあるような気がした。
流山児祥の翻案によるストーリーの展開の面白さもさることながら、それを演じるおばさまたちの、その年齢を超えたパワーとエネルギーの磁力に引き寄せられて、そのまま舞台にのめり込まされていく魅力と瑞々しさがあった。
来年の創立10周年記念には、下北沢本多劇場で、野田秀樹版『真夏の夜の夢』を練り直した流山児「決定版」で祝祭上演するという。これまた、一つ楽しみが増えた。
翻案・台本・演出/流山児祥
5月3日(水)14時開演、Space早稲田、チケット:2500円、全席自由席
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