観劇日記 あーでんの森散歩道 高木登
 
  『祝典・真夏の夜の夢』     No.2006-010
 

 ― 第12回横浜演劇祭参加作品 ―

本公演は、長年に渡って関東学院大学浅田寛厚ゼミナールとして演劇指導をされてきた浅田寛厚氏が喜寿を記念しての演出で、あわせて当学院にゆかりある柳生直行氏召天20周年、および三神勲氏召天10周年を記念した浅田ゼミナール卒業生とヨコハマ・シェイクスピア・グループ座(YSG)座員による公演である。

今回の公演の見どころと楽しみは、英日両国語交えての上演で、パックとアテネの職人たちの会話はすべて日本語(三神勲訳)で、その他は英語の台詞となっている点である。見る前に懸念していた英語と日本語の台詞の会話が成り立つのだろうかという心配は杞憂であった。
原作にはないパック(永田清子)の前口上は、横浜の開港150周年を前にした記念の挨拶や、この物語の舞台についての説明を、古代アテネの物語だが、アテネの森は町から7リーグ(40キロメートル)ほど離れているのを、横浜から小田原までの距離というように身近なところにひきつけているので、親しみを持って自然体になって舞台に入っていける。
今回楽しみにしていたのは、前回のYSG公演『お気に召すまま』でハイメン役をされた池上由紀子さんの台詞力に聞きほれ、次回はもっとその台詞を聞かせてもらいたいと思っていたので、今回のタイターニア役での台詞はじっくりと堪能させてもらった。池上さんの台詞の美しさだけでなく、全体の所作も美しく感じた。
前回の『お気に召すまま』の印象が意外に強く残っていて、ハーミア(小嶋しのぶ)やライサンダー(市川治)、ヘレナ(岩田麻実子)の登場では、前回の役柄のシーリアやジェイクイーズ、ロザリンドを演じた姿をすぐに思い出した。YSGの公演はわずか2回目の観劇だが、それほど親しく感じられるのが不思議な気がした。
もうひとつの楽しみであった増留俊樹さんのボトム。前回の英語での台詞力も演技も相当のものだったが、今回は日本語の台詞で、プロの役者も顔負けの演技力で十二分に楽しませてくれた。
ボトムのピラマスの相方シスビーを演じるふいご屋のフルートの台詞は、それを演じる鴨下実さんの人間味と三神勲の訳がマッチングしていて、えもいわれぬおかしみを覚えた。

演出上で気がついた点としては、オーベロンとタイターニアの争いの元になったインドの少年を、乗り物用のピローサイズのハート型クッションで表象していたが、オーベロンがタイターニアからそれを取り上げたとき、その色はグリーンであったが、二人が和解して、シーシウスの広間に二人が登場したとき手にしたそのクッションの色はピンク色に変っていた。インドの少年はオーベロンとタイターニアの争いの原因であったが、その原因が嫉妬であることを表象してグリーン色であり、ハートのピンク色は二人の和解と愛を表象した演出の創意ではないかと思った。
舞台全体の流れとしては、舞台上の広さの制約もあって、どちらかというと動きが緩慢にならざるを得なかった。ライサンダーとデミートリアス、ハーミアとヘレナの争いの場面も動きが余りなかったのもその一例である。動きの取れない分、台詞力を存分に聞かせてくれないではなかったが、スピード感を欠く嫌いがないではなかった。

台詞力といえば、オーベロンを演じたYSG座長の瀬沼達也さんは、演技力もあわせて見せる力があり、安定感を感じさせた。シーシアスを演じた福田俊一さんの演技と台詞も、素直で実直な好ましい印象を感じた。

(脚色・演出/浅田寛厚、英日(三神勲訳)両語による上演、相鉄本多劇場にて、
4月29日(土)マチネ観劇)

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