観劇日記 あーでんの森散歩道 高木登
 
  演劇集団円公演 『まちがいつづき』      No.2006-006
 

 『まちがいつづき』というタイトルは坪内逍遥にならった訳語で、それは多分訳者安西徹雄が逍遥訳でシェイクスピアのこの劇に初めて出会ったことによる原体験によるものだろう。『間違いの喜劇』というより、タイトルで躍動感、疾走感を感じさせ、今回の演劇集団円の若い俳優人によるドラマにはふさわしいように思えた。

 この喜劇のもつ祝祭性を高揚するかのように、舞台をカーニバルの最中に設定している。舞台の折々にそのカーニバルの雰囲気が演出されているのだが、全体の枠組みにおいてはそのカーニバルの興奮のようなものが伝わってこなかったのではないか。

 今回円の演出や演技で特に印象が残ったのは、まずドローミオ弟がアンテイフォラスの邸の門番をしている場面。上手の扉の外でアンテイフォラス兄、ドローミオ兄が邸の中に向かって声をかける。それに対して下手の扉の外(実際には扉の内側という設定)でドローミオ弟が返答する。舞台から見ると両者が互いに尻を向け合って声を掛け合っているのが俯瞰できるようになっている。

 人物像ではアドリアーナの妹ルシアーナが姉以上に気の強い人物に演出されているのが珍しく、面白いと思った。

 台詞の言い回しで面白いと思ったのは金細工師アンジェロ役の大竹周作。全体的に固い感じがする中で遊びがあって雰囲気が和らいだ。

 当日は小田島雄志先生が来られていて、開演前と終了後のエレベーターで偶然一緒に乗り合わせた。

(訳/安西徹雄、演出/前川錬一、美術/長田佳代子、3月18日(土)、円ステージにおいて観劇)

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