観劇日記 あーでんの森散歩道 高木登2005
 
  関東学院大学シェイクスピア英語劇・第54回公演 『テンペスト』      No.2005-011
 

フレッシュなパワーを感じさせるドラマで、観ていて心地よい感じがしました。

随所にあっと思わせるものがありました。

嵐が起こる前、プロスペローの登場が登場し、マントをはおり、書物を開き、杖を頭上に振り上げます。これで魔法が完成です。続いて登場してきた3人のエアリエルがそれに呼応して同じように手を頭上高く差し伸べます。そして舞台は暗転し、嵐の場面になります。

プロスペローがミランダにミラノを追放された過去を物語る場面では、その話に出てくる人物を、二人の背後に登場させることで話を立体的な構造にします。

エアリエルを3人の女性にしている効果は非常によく出ていました。その衣裳もその名にふさわしく空気のように軽やかな感じで、水色の刺青を模したメイクも水の妖精のようなみずみずしさを感じました。私は、この3人のエアリエルに一番共感を覚えました。

キャリバンは、歌舞伎の隈取りのようなメイクで、衣裳も魚の鱗を表象するような色合いの布切れを身につけています。いやみのないイメージでよかったと思います。

プロスペローが岩屋の前でファーデイナンドとミランダに見せる妖精たちの踊りでは、虹の女神アイリス、実りの女神シーリーズ、そして女王ジュノーが美しい姿で登場し歌を奏で、続いて農夫や妖精たちが登場して収穫祭を祝して踊り、舞台を華やかに楽しくさせます。観客も手拍子で呼応し、舞台と客席の一体感を高揚してくれました。

この劇が素直でさわやかな印象を与えるのは、変なひねりもなく、エアリエルが解放されるときも、彼らは自由の身を嬉々として享受して飛び去っていきますし、キャリバンンもプロスペローとその一行を乗せた船が島を遠ざかっていくのを、手を振って見送り、それが見えなくなると寂しそうに丘を降りていくのがとても印象的でした。

エアリエルやキャリバンにとっては、プロスペローは暴君であったともとれます。プロスペローの台詞にはそれを感じさせる言葉が随所に現れます。そんな暴君であったプロスペローに、唾を吐きかけて去っていくエアリエルの演出などもありますが、ここではそのようなひねった解釈を取っていません。

トリンキュローの仕草にも、台詞を指で口真似の所作をするなど、楽しい趣向がありました。

英語の発音や発声については、多少聞きづらいところもないではありませんでしたが、全体的にはよく頑張っていたのが伺えます。

プロスペローには、演出者である瀬沼氏の思い入れの意図がありましたが、ここでは二番煎じになるのであえて申しませんが、それを伝えるものを感じました。

最後に出演者全員によるコーラスは、観劇の後の高揚感を共有することができて、舞台と観客の一体感を感じさせ、さわやかな気分になりました。

(演出/瀬沼達也、11月27日(日)神奈川県民共済みらいホールにて観劇)

 

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