あーでんの森 散歩道 高木登2004
 
  劇団AUN第9回公演 『夏の夜の夢』 No. 2004-023
 

 劇団員総出演の活気あふれる演技。台詞が激流のように噴流する。劇団AUNの活力を感じさせる舞台である。
 劇団代表で、この舞台の演出家であるシェイクスピア俳優である吉田鋼太郎にとって、『夏の夜の夢』が実質的には初めてというのは意外な気がした。大学一年生のときに入部したシェイクスピア研究会の『夏の夜の夢』の公演に妖精役のオーデイションに応募して見事(?)不合格で、俄か照明スタッフとして参加したのが初めてのかかわりで、それ以来27年ぶりという。

 最近の吉田鋼太郎は公演直前にも旅公演などあって超多忙のスケジュールであるにもかかわらず、演出のみならず、今回は公爵シーシーウス役でも参加。

 私の見た土曜日の昼の部は前売りが早々に売り切れ、自由席で先着順に整理券が発行されるということで、開演1時間前には、私を含めて数名もう並んでいた。

 舞台は、上手に広さが一間四方ほどで、高さが50センチぐらいの井戸のようなものがあり、舞台後方は、パイプを骨組みにして、一間ほどの長さで30センチ幅ぐらいの平板が違い棚風にしつらえてある。役者たちがこの違い棚風のステップを昇ったり降りたりすることで躍動感が強まるだけでなく、それほど広くはない平舞台が、垂直な動きを加えることで大きくなる。

 開演前からの約5分間ぐらいだろうか、黒いタイツを身に着けた女性二人が水(お湯)の入ったバケツ頭の上までかかえあげて、ゆっくりとその井戸に何杯も何杯も湯を注ぐ。その時間が永遠に続くような長さに感じられてくる。

 そして暗転。闇の舞台にセミの鳴き声がかしましく聞こえ、やがて金属音的な高さまで高揚し、突如止み、開幕。

 シーシーウス公爵は、なんとお湯の注がれたその井戸につかっている。その井戸はなんとこの場面では浴槽となっているのだ。湯浴みをしながらシーシーウスは、ヒポリタと婚礼の話をしている。そこへイージーアスが娘ハーミアの結婚問題で拝謁に来る。シーシーウスは、それを機に浴槽から出るが、吉田鋼太郎が一糸まとわず全裸であったのもちょっと愛嬌のある驚き。

 この井戸(または浴槽)は、舞台の進行中にも活用されて、本水を使った動きで舞台の活気が増幅する。

 舞台でこの井戸が浴槽として使われるのは、プロローグともいえるシーシーウスとヒポリタの場面と、最後に妖精パックのエピローグの口上が述べられるとき。この演出法は憎いほどに巧みである。これまでの奔流のような舞台から一転してすべての宴が終わり、最後の余韻を伝えながら舞台は最初の印象を思い返させる回帰の想いにひたらせる。

 演出法としては、最近の傾向としてのシーシーウスと妖精の王オーベロン、ヒポリタと妖精の女王タイテーニアをそれぞれ一人の役者が演じるのではなく、別々にしている。妖精は可愛らしい姿ではなく、タイテーニアをはじめアマゾネスのような異様な形相で女性闘士の姿。林佳世子のタイテーニアと、オーベロンの中井出健が出会う最初の場面の台詞は激しい絶叫の連続。林佳世子の声は今にも裏返ってしまいそうなほどである。

 デイミートリアス役の谷田歩、ライサンダーの北島善紀、ハーミアの根岸つかさ(彼女は舞台稽古中、あわや骨折の痛打の事故)、ヘレナの千賀由紀子をはじめ、みな台詞が激しくほとばしる。

 パックの長谷川耕も、その面相の表情の変化を見ているだけでも楽しい。

 鶴忠博のボトム役は、期待通りのキャステイングで、そのワンテンポ、ワンオクターブずれたような台詞がいつもながら面白い。

 劇団AUNの元気をもらって、今年の観劇もそろそろ終わりが近づいた。

(訳/小田島雄志、演出/吉田鋼太郎、12月18日、高円寺・明石スタジオにて観劇)


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