高木登 観劇日記
 
  シェイクスピア・シアター公演 『じゃじゃ馬ならし』 No 2002-022

〜シェイクスピア&太宰治連続公演第二段、アイガキセキヲシメシタノデス〜

 シェイクスピア・シアターの『じゃじゃ馬ならし』を観るのは久しぶりなので、自分の観たこれまでのシェイクスピア・シアターの『じゃじゃ馬ならし』を振り返ってみた。

 最初に観たのが95年2月で、当時のパナソニック・グローブ座。この時は『間違いの喜劇』との連続公演となっている。クリストファー・スライ鋳掛け屋とペトルーチオに新本芳一、居酒屋のおかみとキャタリーナに福村千亜紀。他にヴィセンショーの大塚英一、グレミオの吉澤憲、カーテスの円道一弥、トラーニオの斎藤芳、ホーテンショーの細谷健など、懐かしい名前がずらりと並んでいる。僕はちょうどこの頃からシェイクスピア・シアタアーの公演を観始めたので、特に懐かしさを感じる。この連続公演では、二つともイタリアのコメデイア・デラルテを再現する、表情豊かな仮面をつけて役者が登場するのも特徴であった。

 次に観たのが98年5月で、同じくパナソニック・グローブ座。これも『ヴェニスの商人』との連続公演で、シェイクスピア喜劇連続上演「内実と外観」と題している。このときのペトルーチオは客演の吉田鋼太郎、キャタリーナがベテランの吉沢季梨。他にもかつてのシェイクスピア・シアターの団員、松木良方(領主/バプテイスタ)と間宮啓之(グルーミオ)が客演として舞台を飾っている。

 今回の公演も2作連続公演で、今年の2月に上演された『ハムレット』と太宰治の『新ハムレット』連続公演に続き、太宰治作品『お伽草紙』との連続公演第2弾となっている。

 前回観た2つの公演を殆ど覚えていないので、今回の公演はみずみずしく新鮮な感じを覚えた。『間違いの喜劇』は仮面劇として鮮明な記憶で残っているのに、そのとき観たはずである『じゃじゃ馬ならし』が仮面劇になっていたという記憶が全然ない。今回も95年の公演同様、コメデイア・デラルテの仮面をつけての上演。

 開演とともに、神父を先導に一組のカップル新郎新婦と親族一同が登場。どうやら結婚式の様子。一転、舞台は居酒屋の前で、鋳掛け屋スライ(杉本政志)と居酒屋のおかみ(原智美)との喧嘩騒動の場。散々悪態をついた挙句スライはそのまま路上で眠りこけてしまう。そこを通りかかった領主(山崎泰成)がスライにいたずらを思いつく。領主気分になったスライが芝居見物となって劇中劇が始まり、この劇中劇が仮面をつけて演じられることになる。

 僕には見始めた頃の17期生を中心としたメンバーの印象が強いため、現在の若手の団員に少なからず物足りなさを感じてきたのだが、今度の『じゃじゃ馬ならし』ではそんな不満も消し飛んだ。ペトルーチオは間違いなく杉本政志だろうと思っていたが、その予想は当たっていた。ペトルーチオの召使グルーミオの永島光教、ルーセンショーの召使ビオンデロの高砂武も軽妙なコミカルの味がよく出ていたし、キャタリーナ役の原智美も、じゃじゃ馬ぶりを溌剌と発揮していた。出口典雄演出のシェイクスピア・シアターの持ち味を十二分に発揮して、台詞のメリハリも効いていて、躍動感溢れる舞台であった。領主/バプテイスタ役を演じる山崎泰成もベテランの星和利もしっかりと存在感を見せた。これからしばらく、このメンバーの活躍を期待したいものだ。

 

(作/W・シェイクスピア、訳/小田島雄志、演出/出口典雄、東京芸術劇場・小ホール2にて、
9月28日昼観劇)


観劇日記2001-2002年目次へ