高木登 観劇日記
 
  日藝アートプロジェクト[NAP]公演 『夏の夜の夢』 No.2002-008

〜KUSHIDA WORKING Vol.1〜

大胆な構成で、奇抜な演出。

 串田和美の第1回KUSHID WORKING公演は、日藝アートプロジェクト[NAP]の最初の公演でもある。プロの俳優と日本大学芸術学部の演劇学科の学生及び卒業生混成のキャストで、シェイクスピア喜劇『夏の夜の夢』を、江古田の日藝に特設された小劇場で4月1日から開演されたその初日を観る。

 特設の舞台は張り出し舞台の構造で、正面と両脇から囲んで観る舞台となっており、正面奥は、独立した5つの可動式扉が、鈍い鉛色の壁面を構成している。舞台床面には、本水を張った小さな方形と大きな長方形の切り込みがそれぞれひとつづつある。全体的に鈍いメタリックな無機質の雰囲気をした装置である。

 開演は、第2幕第1場のパック(串田和美)の登場から、いきなり始まる。パックは水を張った大きな長方形の切り込み(池)の隅に、鞄から取り出した新聞紙にくるんでいた挿し木を植え込む。下町のおばさんといった風貌の背の高い女性(妖精)が下手の扉から顔を出して、パックを見てすぐまた引っ込む。続いて二人の妖精が出てきて、「その姿かたち、見間違えでなければ、あなたは、すばしっこくていたずらな妖精、ロビン・グッドフェローね」とパックの正体を言い当てる。串田和美のパックは、実はその台詞のイメージとギャップがあるのだが、そのギャップが面白さとなっている。正体を見破られたパックは、5幕1場終わりの「飢えたライオン吠えたけり、狼は月に向かって遠吠えあげる」の台詞を嬉しそうに口にして、鈍重に飛び跳ねる。この場面は、この後中盤と終わりに全く同じように繰り返される。

 パックの登場とアテネの職人達による劇中劇「ピラマスとシスビーの物語」の稽古風景から一転して、舞台は第1幕第1場のシーシアスとヒポリタの場面に戻る。このパックとアテネの職人達の芝居稽古を巧みに入れ子構造にした大胆な構成と、奇抜な演出が意表をつく。

 ハーミア、ライサンダー、ヘレナ、デミートリアスの恋のもつれによる喧嘩騒動は、本水を張った長方形の切り込み=池、にはまっての大奮闘。4人とも水を浴びての大熱演となる。

 エンデイングが印象的であった。夜の闇を、妖精達がそれぞれ大小さまざまなサイズの白いボールを手に持って舞台を練り歩く。その白いボールが蛍光色を発して、妖しい光を放つ。妖精達が池に集まり、身を寄せ合うと、その蛍光色は螢のイメージとなって、妖精のイメージと融合する。美しい演出である。

 出演者19人の内8人が学生ということであるが、プロと学生アマとの混成がアンサンブルとなって、粗削りな中に刺激的な活気が感じられる舞台であった。

(作/W・シェイクスピア、訳/松岡和子、構成・演出・美術/串田和美、4月1日、
日藝シアターNAPにて観劇)

 

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