高木登 観劇日記
 
  アフロ13公演 「クロマニヨンショック」    No.2002-002

〜原始時代版 ロミオとジュリエット〜

チラシのキャッチコピーは時に重要である。これまで名前も知らなかった劇団で、しかもタイトルから劇の内容を推し量ることが困難な場合には特に。

<アフロ13>などというシュールで前衛的な劇団名で、「クロマニヨンショック」という題名だけではまずおよそ観る気を起こしてはいなかった。<原始時代版 ロミオとジュリエット>というシェイクスピアを感じさせる、ただそのことだけの接点で、人は劇場に足を運ぶこともあるのだ。

上演台本付きのパンフレットによれば、その劇団名の由来はやはりシュールである。シュールレアリスム発生にならい、メンバーがそれぞれ好きな言葉を書き、それを一つの言葉に纏め上げ、新しい言葉を作った。それが<アフロ13>。全く違ったもの同士が組み合わさることで、未知のものを生み出すという趣向である。

劇団は98年10月京都で結成され、12月に第1回のライブ「宇宙人のお兄ちゃんはドロドロ満月星人や」を上演(京都大学吉田寮)。そして劇団結成2年目で本拠地を関西から東京に移す。

「クロマニヨンショック」は昨年1月、人類創世シリーズの第2弾として公演したものを大幅にリニューアルしての再演である。脚色・演出担当で劇団主宰者である佐々木智宏の言葉を借りれば、

<人類創世シリーズとは、人類創世の謎に迫ろうという心持で始めたものです。その第一弾『海の底オシッコしたらキラキラアンモナイトの夜』では、まだ人類の持つ「感情」というものが「混沌」でしかなかった頃、その「感情」が「愛情」というものと「憎しみ」という感情の二つに初めて別れた瞬間、というのを、描きました。この作品では、アクア理論(人類は、かつて水棲動物だったという仮説)に基づき、それを海底の王である父と河童族の救世主である娘の愛憎劇として描きました。そして第二弾の本作『クロマニヨンショック』では、「人間が初めて人間になった瞬間」を描こうといたしました。「原始時代」「空を飛ぶ」をキーワードにし、脚本の伊東さんから、「ロミオ&ジュリエット」の要素をもらいました>ということで、全てが言い尽くされる。

さて本題。太古の原人類ネアンデルタール人が、新人類クロマニヨン人に滅ぼされゆく物語に、異人類としての叶わぬ恋が絡んでくる。ネアンデルタール人は、鳥獣のマスクをかぶり、空を飛ぶことができる。それゆえ、ネアンデルタール人は<人>ではなく、獣としてみなされ、敵として扱われ、滅び行く運命にある。ネアンデルタール人とクロマニヨン人との間にある感情は「憎しみ」だけである。両者の間では戦う関係しかない。ネアンデルタール人は太古の人類故、個々の存在としての名前すらない。しかし、ネアンデルタール人の鳥獣マスクの下には、クロマニヨン人と変わらない<人>の顔がある。戦闘のさなか、クロマニヨン人の女キウエルは、ネアンデルタール人ウーアルセンAの素顔を見て、クロマニヨン人と変わらぬ人の顔であることに驚く。そして...恋をする。「憎しみ」しか存在しなかった原人類と新人類の間に「愛情」という「感情」が両者の間に芽生える。ウーアルセンAは、空を飛ぶネアンデルタール人の中で、ただ一人空を飛べない男。ウーアルセンAは、新人類クロマニヨン人の移行段階の存在だったのかも。この物語は、原始時代の世界というより、異星人もしくは異界人の世界という方がふさわしいだろう。人類創世記に絡んだ異界人の恋物語ともいえる。

光の喧噪を駆使したネオ・ミュージカル、ネオ剣劇のライブは劇団☆新感線譲りを思わせる。

シェイクスピアがこんな所にも使われている面白さ、意外さの楽しみを覚える。

(演出/佐々木智宏、脚本/伊東幸一郎・佐々木智宏、1月27日(日)東京グローブ座にて観劇)

 

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