高木登 観劇日記
 
  板橋演劇センター公演 No.69 「恋の骨折り損」 No.2002-001

〜第12回東京地域劇団演劇祭参加作品〜

『夏の夜の夢』で1980年7月に旗揚げ公演した板橋演劇センターも、今回で69回目、そしてシェイクスピア作品の初演も、この『恋の骨折り損』で16本目となる。劇団代表で俳優・演出家の遠藤栄蔵のこだわりもあって、すべて小田島雄志訳での上演である。

今回の公演の特色としては、まず舞台美術の美しさ。舞台はいつものように、三方を客席で囲む張り出し舞台。チェス盤を八百屋(開帳場)舞台にして、舞台中央後方に、クリーム色の円柱が2本、その上にカイゼル髭の形状をしたアーチが架けられている。その円柱の両翼は、蜻蛉の羽を想像させる若草色の紗幕を張った衝立。垂直方向にシェイドフェイドさせた深い群青色の背景の色がとても美しく鮮やか。その舞台美術は、前回の『ロミオとジュリエット』『テンペスト』に続いて、高橋あや子。

今回の見物(みもの)のもう一つは、その衣裳。ナバール王国の王と貴族たちの衣裳も面白いが、フランス王女とその貴婦人たちの衣裳(劇中何度か着替える)がステキである。その華やかさも楽しみの一つである。衣裳は、えみこ。

さらに、今回の特徴としては、小劇団の座長、副座長格の俳優が参加した豪華キャストである。それぞれの持ち味が舞台上で張り合って、盛り上がりを見せてくれる。ナバール王には、板橋演劇センターを代表する役者、鈴木吉行。ナバールの貴族ビローンに代表の遠藤栄蔵。フランス王女は入団4年目を迎える関根祐美子、ロザラインは、板橋演劇センターの第1回演劇のつどい『夏の夜の夢』以来16作品すべてに出演の酒井恵美子。客演では、遊戯空間主宰の篠本賢一が警吏ダル、OKプロジェクトの桑島義明が小姓モス、スペイン騎士アーマードーに針生りん太郎、教師ホロファニーズにおぎゅうようこ、ナサニエル神父に劇団胎動の今井良春、池袋小劇場の山田武(フランス貴族マーケード)ほか多士済々。なかでも、ホロファニーズ役のおぎゅうようこの骨太な演技が印象的で、とぼけた感じで演じる今井良春のナサニエル神父とのコンビネーションが絶妙であった。

『恋の骨折り損』は、国内では殆ど演じられることがないだけに、貴重な公演でもあった。記憶に新しいところでは、2000年にケネス・ブラナーのミュージカル映画として上映され、昨年彩の国さいたま劇場で英国学生劇団の公演があるのみである。

ミュージカルといえば、2月の第4回東京芸術劇場ミュージカル月間に、スーパー・エキセントリック・シアターがこの『恋の骨折り損』のミュージカル作品で参加するのも楽しみである。

(演出/遠藤栄蔵、東京芸術劇場小ホール2にて、1月19日(土)昼、観劇)

 

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