〜シェイクスピアの夢幻の世界に遊ぶ〜
新宿・初台の東京オペラシテイ3階にある近江楽堂は、チャペルを思わせる白壁の静謐な内装で、わずか3間四方ほどの小部屋である。その近江楽堂で、設立4年目を迎えるウイリアム館が5日間(9月20日〜24日)で「夏の夜の夢」と「十二夜」を交互に、それぞれ4ステージ上演。
ウイリアム館は、1997年、千葉県丸山町にオープンしたシェイクスピア・カントリーパークのオープニング公演を契機に、小林拓生が結成した若い劇団である。
これまでの公演記録は、
1999年7月 「夏の夜の夢」 演出/小林拓生 渋谷ジャンジャン
2000年5月 「マクベス」 演出/関川慎二 内幸町ホール
2000年10月 「ペリクリーズ」 演出/小林勝也 青山円形劇場
となっている。
僕は3回目の公演の「ペリクルーズ」でウイリアム館と出会った。
僕は初日(20日夜)の「夏の夜の夢」と、22日の夜の部で「十二夜」を観た。
20日は平日とあってか、客席は7割かたの入りであった。
観客席は、四方から中央の舞台を囲んで見る形である。それぞれが25席ずつ、合わせて百席のこじんまりした舞台。登場人物は、前後の入口から出入りし、客席と舞台の距離がない。
従って、スピード感があり、何もない空間に、照明だけで夢幻の世界が拡がる。観客は想像の翼を自由に拡げ、台詞を楽しむことになる。
「夏の夜の夢」でまず特筆したいのは、妖精パック。女性のパック役で、演じた市川はるひがいかにも楽しそうな表情で、見ていてそのこぼれるような笑顔と伸びやかな演技に魅せられた。
チラシのキャスト紹介では、例のアテネの職人達が全くなく、劇中劇抜きの「夏の夜の夢」かと心配(?)したが、妖精の女王タイテーニアに愛されるロバに変えられたボトムの登場、最後の大円団、アテネの職人一同による「ピラマスとシスビー」の劇中劇も無事行われた。
アテネ校外の森の中では、職人達の芝居稽古の場面がない分、恋人達の恋の追走劇が舞台を凝縮させ、余分なものを削ぎ落とした効果はそれなりにあったように思われる。
「十二夜」は、土曜日の夜の部で観た。この日は客席が全部埋まって、立ち見客まで出た。
こちらの見所(聞き所)は、道化のフェステ役、鈴木智香子の美声。オーシーノ公爵の台詞に習えば、「音楽が劇の糧であるなら、つづけてくれ」と言いたい。実にいい声で歌をきかせてくれる。「夏の夜の夢」でパックの笑顔にうっとりさせられ、「十二夜」でフェステの美声に酔いしれた。生演奏のハープもよかった。
ウイリアム館の2つの劇を観て感じたのは、女性パワーが元気あるという印象である。
シンプルな中に、元気あふれる活力を感じ、シェイクスピアとの出会いに悦びを重ねた。
(作/W・シェイクスピア、訳/小田島雄志、演出/小林拓生、東京オペラシテイ・近江楽堂にて)
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