高木登劇評-あーでんの森散歩道
 

2002年の「シェイクスピア劇回顧」と「私が選んだベスト5」

観劇日記に記した以外で観劇したシェイクスピア劇

劇団FUGS(フグス)公演 『夏の夜の夢』 (脚本・演出/高宗謙三、中野・劇場MOMO、3月1日)
人形劇団ひとみ座公演 『ロミオとジュリエット』 (脚本・演出/藤川和人、3月11日)
櫻会公演 『夏の夜の夢』(構成・台本・演出/沢田次郎、中野新橋・櫻会スタジオ、7月11日)
娑翁落語を楽しむ 『夏の夜の夢』翻案『稲荷町の陽炎』(出演/古今亭志ん輔、東京グローブ座、7月13日
鳥獣戯画公演 『三人でシェイクスピア』 (原作/Jess Bogeson、Adam Long、Daniel Singer、翻訳/小田島雄志・長谷川仰子、演出/知念正文、出演/石丸友里子、ちねんまさふみ、赤星昇一郎、下北沢・ザ・スズナリ、10月25日)      
アカデミック・シェイクスピア・カンパニー公演 『オセロー』(「愛に潜む緑の危険」、4人の俳優ですべてを演じ切る、演出/綾乃木嵩之、出演/O=菊地一浩、I=綾乃木嵩之、D=那智ゆかり、E=音室亜冊弓、銀座みゆき館劇場、11月22日)

見ようとして見逃した作品
(チケット入手ができなかったり、チケットを買っていたが急な出張で見逃した作品)

3月、『天保十二年のシェイクスピア』(井上ひさし作、いのうえひでのり演出、新感線公演)チケット取れず。
4月、アンジェロス公演 『夏の夜の夢』、出張でチケットを無駄にする。
6月、板橋演劇センター公演『タイタス・アンドロニカス』、他の演劇予約で日程上観劇できず。
8月、蜷川幸雄演出 『夏の夜の夢』、日程上、先行予約チケット取れず。
9月、タイプス公演 『マクベス』(MOTSU演出)、海外出張中
10月、蜷川幸雄演出 『マクベス』、日程上、先行予約チケット取れず。
11月、別冊はちまる第一弾公演 『超訳ロミオ&ジュリエット』(楠美津香 X さとうしゅうへい演出)、チケット取れず。

2002年のハムレット劇
 今年もハムレット劇の話題に事欠かなかった。
 昨年紀伊国屋演劇賞を受賞した吉田鋼太郎主演によるシェイクスピア・シアター公演の、再演『ハムレット』に始まり、ペーター・シュタイン演出の『ハムレット』、女優安寿ミラが演じる『ハムレット』はそれぞれ特色があって面白かった。特に、後者2作はフォーティンブラスが出ないことで特色があり、逆にフォーティンブラスを主役にしたスカイスケープ主催の『フォーティンブラス』など、話題性に事欠かなかった。
 また、ハムレットをモチーフにした作品としては、シェイクスピア・シアター公演の太宰治作『新ハムレット』、劇団星座による『なに様?!シェイクスピア『ハムレット』より(1月)、ハイナー・ミュラーをモチーフにした笛田宇一郎の『ハムレット/臨界点』、音と映像による魔術的演出パパタフマラによる『Bird on Board』など多種多彩であった。

私が選んだベスト5と選考理由

1. RSC来日公演『ヴェニスの商人』
法廷の場面で裁判に敗れたシャイロックがアントーニオにヤムルカ(キッパ)を無言で手渡すところで電気が走るような衝撃を感じた。
2. ペーター・シュタイン演出の『ハムレット』
演劇空間としての舞台装置と、ハムレットの音楽を愛好する現代青年という設定に斬新さを感じた。
3. 夜想会公演 『ジュリアス・シーザー』
原田大二郎が演じるシーザーのスケールの大きさや、以前にハムレットを演じた宮内敦士のブルータスが清新なイメージで印象的であった。
4. 無名塾公演 『ウィンザーの陽気な女房たち』
昨年上演された鴻上尚演出による江守徹のフォルスタッフと仲代達矢のフォルスタッフとの比較において興味深かった。
5. メジャーリーグ制作 『ハムレット』
女優が演じるハムレットと男優が演じるガートルード、オフィーリアの性の倒錯、コロスを多用する栗田芳宏の演出に。

特別賞 (ベスト5に収めきれない印象的な作品)

1. シェイクスピア・シアター公演 『新ハムレット』
『ハムレット』でハムレットを演じた吉田鋼太郎がクオーヂアス、ホレイショ―を演じた杉本政志がハムレットを演じる2本連続上演ということで、その対照が印象深い。
2. 篠原久美子作 『マクベスの妻と呼ばれた女・2002』
「名前を持たなかったマクベス夫人とは何か」を追及する大胆な発想と、シェイクスピアの他の作品に登場する女性たちを巧みに登場させる斬新さが大変面白かった。
3. ベルリーナ・アンサンブル来日公演 『リチャード二世』
ベスト5に入れたかった。アヒム・フライヤーの舞台美術が刺激的な表象性を感じさせた。冒頭のグロスターの死体と最後のリチャード二世の死体、そしてリチャード二世の殺害者を、彼の叔父ヨーク公爵に置き換えたトーマス・ブランシュの翻案が、この物語の「歴史の繰り返し」の象徴性を高めている。
4. 京劇 『リア王』
呉興国の伝統的な京劇と現代劇との融合と、一人十役の早変わり。シンボリックな舞台であった。
5. 幹の会の『リア王』
5年前に栗山民也演出で上演されたものを主演の平幹二朗が自ら演出した興味と、大幅なキャストの入れ替えに興味があった。ゴネリルの新橋耐子、リーガンの一色彩子、グロスター伯爵の坂本長利がよかった。

 

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