高木登劇評-あーでんの森散歩道
 
   劇団ワイキキ旗揚げ解散公演 『真夏の夜の夢』           No. 2001_018

 ン?!旗揚げ解散?!どっちなんだ?何かの間違いか?
 電話で直接劇団に予約を入れた時、「旗揚げ公演ですね?」と確認したら、「そうです」と答えたので、解散はミスプリかなと思ったのだが、実際に1回こっきりの劇団公演であった。
 まさに<真夏の夜の夢>とも言うべき公演である。
 自由席ということもあって7時開演なのに6時早々に着いたが、15番目の整理券であった。
 見渡したところ20歳前後の女子ばかりである。会場に入ってからも男性は1割足らずでで、スズナリの百人ばかりの客席に男性はわずか10名足らずであった。
 席は最前列をゲット、開演まで狭い客席でストレッチや首の柔軟体操で備えた。
 この劇は、地元ワイキキ商店街の人々が地元商店街の活性化をもくろんでの夏祭りの催し、ともいうべき作りである。ワイキキ主店街は新しくできた大規模スーパーに押されて、今や風前の灯火。
 そこで商店街の面々が町おこしならぬ商店街おこしに、芝居を企画。
 ワイキキ商店街の店主たちはみな若い。そこで芝居もしゃれてシェイクスピア、それも演出の柳田伊 久子いわく「おじいちゃんの遺言」だからと『真夏の夜の夢』。
 アテネの職人たち同様、商店街の面々にとっては初めての芝居。
 芝居は破天荒。一同、階段状の低いテラスに彫像の姿勢で、外人訛りの日本語の台詞でいきなり始まり、驚かされる。が、こんな台詞回しでは9時間もかかる、夏祭りの芝居は20分でやらなくてはならない。
 ということで出直しとなり、芝居の人物からワイキキ商店街の人に戻って、一同、三々五々退場する。
 ここから劇は、ワイキキ商店街の普段の生活風景と、『真夏の夜の夢』の劇の練習風景とが交錯して進行することになる。
 芝居の場面は、アテネの森の中。ハーミアとライサンダー、デミートリアスとヘレナ、この二組のカップルの恋のもつれの一騒動が繰り広げられる。
 アテネの職人たちが芝居好きのように、ワイキキ商店街の人たちも芝居好き。あれこれ文句を言いながらも次第に仕上がりが進む。
 練習風景はTシャツ姿同然の普段着から、本番の舞台では夏祭りにふさわしく、アロハ風シャツの舞台衣装。
 さあ、ご町内の人たちは満足して見てもらったことでしょうか?!
 ワイキキ商店街の人々に来年の夏祭りはない。というわけで、ワイキキ劇団の公演も本当に<真夏の夜の夢>。
 明日を夢見て旗揚げし、今日を限りに解散。またいつか会えることを!

 

脚本・演出/柳田伊久子、制作/劇団ワイキキ
8月15日(水)19時開演、下北沢・ザ・スズナリ、チケット:3000円、全席自由席


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